多摩湖-161
 電気自動車会社テスラのイーロン・マスク氏が開発中の、超音速列車「ハイパーループ」を思わせるような、フロントと宿泊部屋間でのお金や領収書のやりとりを、パイプの中の圧縮空気もしくは真空圧を利用して行う”エアーシューター”を備えていた、ラブホテル「クイン」最奥部にあった住居棟。

 タイで洞窟に閉じ込められた少年達を救おうと、そのイーロン・マスク氏が自社製の小型潜水艦をタイに持ち込んだまでは良かったが、現地在住の初老のイギリス人ダイバーに「役に立たない。宣伝のために来るな!」と冷たくあしらわれ、逆上したマスク氏が「この小児性愛者が!」とツイッターでやり返し、それを受けてテスラ株が大幅に下落をした一連の騒動。

 同ダイバーは「マスク氏は自分の潜水艦を急所に突き刺しておけばいい」と卑猥な隠語を使ってまでマスク氏を罵っており、その流れにのって返す刀で彼が侮蔑的な言葉で応酬したことは、多少の同情の余地がある。

 売名目的を戒めたかったのもあるだろうが、こんなお爺さんがそんな下品な言葉を吐く素地としては、現地支社の駐在員ではなく、タイに住む外国人初老男性特有の、小児性愛者の臭いを、マスク氏が敏感に嗅ぎ取ったこともあるのだろう。

 僕も以前よくタイに行っていたが、個人で移り住んでいる五十過ぎの日本人の人達は、バンコクやチェンマイの山の中の町に大勢いて、大抵、そういう性癖の人であった。

 当時はタイの銀行の利子が年率10%だったので、日本で死に物狂いでバイトでもして一千万円ぐらい貯め込んだ人が、終の棲み家、開放された性の楽園として、まだ物価の安かったタイで、年100万円もあれば余裕だろうと、大勢の歪んだ性癖を持った初老の日本人達が我も我もと押し寄せていたのである。

 聞けば、バックパッカーの成れの果てのような人ばかりだったので、僕も将来こんなことになってしまうのではないかという危機感があり、そうならないためにも、よく話を聞いておく必要性がありそうだと感じていた。

 チェンマイで平日の昼間からカフェでビールを飲んでいる五十過ぎの日本人男性に話を聞いたりしたが、日本だと学生ぐらいの年齢の娘を一人や二人囲っているのは普通で、マンションも借りられるし、際立った贅沢(愛人やマンションでもじゅうぶん贅沢だが)をしなければ一生、こんな生活を君だって送れるよと、よく自慢話を聞かされたものだった。

 その後、アジア通貨危機があり、バーツの大暴落、外国人銀行口座の凍結、年率10%など夢のまた夢という状況になり、彼らはカンボジアへ移動。そのカンボジアは現在ではイオンが出店するまでになり、それからの移住先の詳細は、わからずじまいである   



多摩湖-159
 現在の廃墟は日本経済全盛期の残滓であり、当然、この赤と白の任天堂「ファミリーコンピュータ」の抜け殻、箱はよく見かける。

 これより数十年    日本がゲーム大国なんていうのはもはや過去の話になってしまった。

 YouTubeの実況で大人気のゲームは、韓国や中国、欧米のPCゲームばかり。今やAKBの人気メンバーが、中国製の人気PCゲームを実況して、必死にアピールをする時代。

 Switchなんて日本人しか買ってません。任天堂が出荷制限をし、社会心理学で言う「希少性」のテクニックを使い、飢餓感を煽り、メディアに提灯記事を書かせ、売れたように見せかけているのです。



多摩湖-160
 オーナー家族にしては、素っ気ない、ユニットバス。

 側面の蓋を外してまで、器具か鉄パイプでも盗んでいったのだろうか。

 ハイエナのような奴が、いるもんです。



多摩湖-162
 この手紙差しも廃墟の定番。

 大抵はがきや封書もそのままだったりするが、ここでは抜き取った後の様子。



多摩湖-163
 家族の住居棟ばかりと思っていたが、シングルベットなので、独り身のオーナーであった可能性が高い。素っ気ないユニットバスもそれなら説明がつく。

 ふと、去り際に、未練を残して置いていったかのような、写真の額縁が目を引く     
 


多摩湖-164
 スター、にしきのあきら。中央の上下を黒できめ、ワンポイントのゴールドのネックレスもお洒落なその御婦人こそ、かつて先進設備を誇ったホテル「クイン」の女性オーナー、その人でしょう。

 ご高齢の個人経営者ゆえ、突然のご逝去により、その瞬間から、この空間の時間が止まってしまったのだろうか。

 写真に日付があるが、1987年の10月26日のようである。



多摩湖-165
 写真に向かってしばらく黙祷をした後、外へ出た。

 女性オーナーが夢を託した希望のフィールドは儚くも崩れ去り、重苦しい空間を闊歩するのは、忌々しい不法侵入者と、たまに野良猫ぐらいだ。

 勿論、僕もその中のひとりであることを、いついかなる時も、忘れてはならないだろう。



多摩湖-166
 ラブホテル「クイン」内は、サーキットのような周遊コースになっている。

 入り口から進んで、最奥部の住居棟まで達すると、その前でターンをする。そこでまた、出口までのストレートを進んで行く   



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 御婦人が社長の、「有限会社クイン」。

 未来志向の敏腕経営者も、病魔には打ち勝つことができなかったのかもしれない。



多摩湖-167
 またひとつ、部屋に入ってみる。

 ここにも床で生活をしていたような痕跡が。



多摩湖-168
 いや、若いカップルが、刺激を求めて、いつ誰が来るやもしれぬスリルのある状況での情事を、楽しんだのか。
 


多摩湖-170
 ここでも、エアーシューター、いや、正式名「エアキャッシャー」。

 微かな記憶で、昔僕の家の冷蔵庫に、水が出てくるサーバーみたいなのが付いたが、それに似ている。こまめに掃除をしないと、すぐカビの目立つ欠陥品だった。



多摩湖-171
 やはり、末期は、相当追いつめられていたのか。最終手段のダンピング、カラオケを無料放出という、出血大サービスを行っていた。


   出口への道は、まだまだ険しく続いていた・・・




つづく…

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