奥多摩の寮-39
 中学や高校を出たての、一日中異性のことしか頭にないような、止めどもない性欲が溢れんばかりの青年たちの欲望の全てを曝け出したかのような、山奥なのに、磯の腐敗臭がほんのりと  そのあまりにも惨憺たる卑猥な目の前の情景から察するに  漂ってきそうな錯覚さえしかねない、くつろぎスペースだと思われる居間の中央にデンと置かれた、ダイニングテーブルの上の夥しい数のエロ本の山   

 それらの確認作業のため、でも時折じっくり沈黙とともに読み耽ってしまいながらも、かき分けてゆくと、一番下の層に、今では誰も知ることのない、エロ本寮以前のここの真の姿を、奇跡的に、後世に伝えることになるやもしれない、一冊のフォトアルバムが、まるで、汚れた寮のイメージを払拭せんがために、置かれていったかのようにも思ったが、層の時系列的にそれはありえず、何らかの思いの丈を託して、まだ荒れる前に、そっと、残していっただろう、そのフォトアルバムをおもむろに開いてみた。

 そこには・・・・・・



奥多摩の寮-42
みちこの友達

 畑山さん

 なぜか トイレの
 まえで、みちこ が
 写す


1986.08.13

 招かれているのに、放心状態の畑山さん。

 後でトイレへも探索に行くことになるが、あのトイレを使えと言われたら、一般家庭に住む女の子だったら、こういう顔になるのも無理もないのかもしれない。



奥多摩の寮-40
 川原の場所は、もうそのすぐ前の下か。寮家族には日常の光景であっても、来客にとっては信じられないような自然環境であったに違いないだろう。

 寮生がエロ本を買い求めていたのは、奥多摩駅の駅前の書店だろうけど、それとはおよそかけ離れた、おそらく親戚や同級生の友達との心温まる和やかな駅前記念写真。

 全裸の「忠」君は、この寮の息子だろうか。


 部落友達とあるが、東京ではいわゆる被差別部落は下町に集中しており、ここでの部落は、こじんまりとした集落のことを指しているものと思われる。本来そういう言葉であり、都下に住む人達はそういった差別用語を意識することなく、普通に部落という呼称を使っている。

※よく見たら、部活(部活友達)でした



奥多摩の寮-41
近藤さんの甥

 とし君(小6)

 弘君が合宿で
 こられないので
 代わりに


 淳君(中2)



 彼らもいい年の社会人となっているはずだが、ふと、楽しくはしゃぎ煌めき眩しかった奥多摩の寮でのひと夏の水遊びを思い出し、今どうなっているのかと、訪ねて見ようかという気にならないのだろうか。

 このような写真を廃墟で見かけるたびに疑問に思うが、そうならない(再訪)ことが、ほとんどのようであるようだ。



奥多摩の寮-43
日和山純ちゃん
 (中1)


 忠君のお姉さん。

 ちゃん付けなので、ここの子ではないということになる。

 非常に珍しい名字なので読めなかったが、「ひよりやま」というらしい。仙台にある山の名前でもある。



奥多摩の寮-44
日和山廣子

近藤洋子


 数十年後、バーベキューを楽しんだこの岩場に、寮の壁の一部が崩れた残骸が散乱しているとは、この笑顔で写真に収まっている時には、まさか、想像もしなかったことだろう。

 楽しかった往時を偲ばせると同時に、全くの他人事ながら、無慈悲で過酷な現実に思わずいたたまれず目を背けたくもなった   



奥多摩の寮-45
坂本守

日和山登

ポップコーンをつくろ
うとして 長い 棒を
つけているところ
結局 火の いきおい
でかみが破れて
ポン ポン とびだし
て 失敗!

 
 不甲斐ない絵に描いたような二人の駄目オヤジに、当時は、さぞかし岩場に大爆笑が巻き起こったことでしょう。

 二人の御主人のうち、日和山さんは招かれている方なので、ここの寮の主人は、坂本さんなのだろうか。

 建物に表示のあった「難波」さんはオーナーで、坂本さん家族が管理を任されているのかも。



奥多摩の寮-46
 登さん、これはいただけない、子供にはちょっと見せられない、はしたない豪快な乞食食い。

 むっちりお母さんは、白い太ももをチラリと。



奥多摩の寮-47
とし君
  淳君

みちこ 畑山さん


 帰りたくてしょうがないらしく、露骨に嫌悪感を示している、畑山さん。

 汲み取りトイレが苦手とかではなく、山奥の寮に来ること自体が嫌だったのか、終始浮かない様子。

 この部屋は、現在エロ本の積み重なる居間から障子を開けて入って行った場所にあり、今はそこにはテーブルは無く、ホームレスが寝た後のような敷いた布団一式と、折りたたみベッドが置かれている。

 つまり、誠に皮肉なことながら、子供らが楽しく人生ゲームに興じているこのテーブルは、現在、エロ本が山のように積み重なっているテーブルと、同じ物なのである。


 幸せそうな家族が集う笑いの絶えなかった健全な寮が、いかにして殺伐としたエロ本寮に成り果てていったのか。

 没落していった歴史を紐解こうと、さらに頁をめくっていき、奥や下の部屋にも探索の幅を積極的にひろげてゆく   


 

つづく…

「振り出しに戻った、エロ本寮」森の奥の、廃墟エロ本寮.5

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