回廊ペンション-27
 途切れることのない、隣家からの薪割りの音が、なぜか懐かしく感じられる。

 久しぶりに聞いたような、その安定した等間隔の脈打つような手慣れた力のこもった熟練者による、斧を寡黙に振り下ろす、鼓膜を弾くように響く、渇いた、カッツシーンという、破砕音   

 これは、肉体と汗と血で稼ぐ、本物の山の男の周辺一帯に響く、雄叫びだ、まるで僕のことをおまえは偽物だと、人の上澄みをすすって手当たり次第食い散らかしてトンズラするだけの、食い逃げ野郎だと、詰問され、証拠を目の前に突き出されて、責め立てられているような気がして、階上に行こうと、踏み出した右足が、いまだ宙に浮いたまま、行こうか戻ろうか、踏みとどまったまま、いたずらに時が過ぎていっているような気がした。

 俺、まだこんなところにいたっけか・・・

 今か今かと復活の時を窺う、ソワールデビュース相模湖クラブのオーナーのお膝元へ赴く前に、機会があれば、提案でもできるようなヒントが見つけられないものかと、出過ぎたおせっかいと言われようと、信念を揺るがすことなく、ついに、階段のステップに右足をかけたのであった   



回廊ペンション-28
 階段を登り、薄暗い踊り場で転回をするが、この場に窓など見当たらないのに、このネーミングには、どういった意図があるのだろうか。



回廊ペンション-29



回廊ペンション-30
 オーナー得意の木材の切れっ端を利用した看板。

 名前だけは大層な部屋が並んでいる。



回廊ペンション-31
 ロダンの間。

 近代彫刻の父といわれる、あの「オーギュスト・ロダン」の名からでしょう。

 他の部屋の名前も、浅薄な音楽や美術の知識から適当にとったもの。



回廊ペンション-32
 両壁面に大きなガラス窓を備え、最高の眺望が望めるが、至って普通の和室。



回廊ペンション-33
 月光の間。



回廊ペンション-34
 張り出しがあり、展望台のようになっている。

 お月見でもしてくれとのコンセプトだろうか。



回廊ペンション-35
 テレビは嘘ばかり、廃墟ではない、正真正銘、営業中であると主張していたようだったが、これは、どう見ても・・・


オーナー
★ペンションの地位継 承する兄弟・姉妹運営をする新オーナーを募集します。
           詳細は面談の上とします。 ★


 ただ売るのではなくて、地位を継承するのだという。しかも、兄弟と姉妹に限るとのこと。

 加えて、面談もあるらしく、切実な身でありながら、他人へ課すそのハードルはやけに高い。



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 白鳥の間。



回廊ペンション-37
 使い込んだルーターが。

 パソコン黎明期からやっていたようなあのオーナーは、昨今の技術には取り残された感がある。聞く耳を持たず、自己流でやってきたので、進化せず、ああいう化石のようなページが残ってしまったのかもしれない。逆に今だからこそ、あの誰もがパソコンに未来を感じた頃の郷愁を誘う秋の深まったような味わいが、あのページに染み出てきていると言えるだろう。
 


回廊ペンション-38
 ガラスを割り、手を回して開けようとした酷い輩がいますね。 完全にロックされてますよ!



回廊ペンション-39
 褪せたビロード張りの階段を、しずしずと、昇って行く   



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回廊ペンション-41
 ハーモニーの間。

 大部屋なので部屋に入られた団体の皆さん、”調和”を保ってくれと、デビュースのオーナーの真意が汲み取れるかのよう。



寺前
 保たれた調和の中にも、自己主張溢れる力強いピースサインは忘れない、デビュースオーナー。



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 とことん、純和室。



回廊ペンション-43
 ハーモニーの由来として、オーナーが粋な計らいで常備したのか、寂しい近所の子供が持ち込み、いつしか成長をして、いらなくなり、あの三輪車同様、置いていった物であるのか   



回廊ペンション-44
 窓を開けると、驚きの光景がひろがっていた。



回廊ペンション-45
 デビュースの庭に、爆弾でも落とされたかのように、手作り空中庭園が、大崩落を起こしていたのである。

 まさか、グランドピアノを据えて、その重みでこんなことになったのか・・・

 この後も、ヘドロで満たされた露天風呂や、まだ続く各部屋に、屋上、おもちゃ王国、地下、さらには、ミルフィーユのように何層にも重なる空中回廊を綱渡りのようにして徹底的に完全踏破し、折を見て、デビュースのお膝元へも行くことになる   


 

つづく…

「腐った露天風呂」空中回廊のある、廃墟ペンション.5

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