オカルト茶屋-37
 人によっては、鼻通りの良いメントールのような若かりし日の爽やかな思い出さえ蘇ってくる、女学生の馥郁とした芽吹きのような芳醇ささえ湛えた、目も眩みそうな夥しい数の残留物。

 人呼んで”オカルト茶屋”の一室の畳の上、切り取られた青春の一枚を発掘する。

 1973年「学生街の喫茶店」の大ヒット曲でも知られるフォーク・ロックグループ「ガロ」の三人の雑誌切り抜きだ。

 当時フォーク歌手はテレビ出演しないのが一般的であったが、彼らは多数のバラエティ番組に出演をして物真似を披露するなど、後のシャ乱Qや氣志團にも通じるような異色の活動をして注目を集めた。

 なお、向かって右のトミーこと日高富明は、1986年9月に自宅マンションから転落死。享年35歳という若さであった。

 時系列からして、部屋主の女学生が、トミーの自殺に悲観をして後追い自殺なんていうことは、無かったでしょう。

 トミーが自殺した同年、遡ること5ヶ月前の4月8日、アイドルの岡田有希子が、所属する事務所のサンミュージックの入るビル屋上から、飛び降り自殺をしている。

 彼女の飛び降り自殺の後には、共感されたのか誘発によってであったのか、連日のように後追い自殺が頻発した。いい加減なネットアフィリエイトまとめ記事には「ショックを受けたファンが連鎖的に後追い自殺を・・・」と書かれていたが、当時後追い自殺をしたのは主に女子学生がほとんどだったと思う。

 中には女子学生同士、手をつないで校舎屋上から飛び降りたのもいた。岡田有希子のファンというより、死ぬきっかけが欲しかったが踏み出せずにいて、有名女性アイドルの自殺により、押し留めていた心理的垣根が取っ払われて、一部が決壊し、集団心理によって徐々にその穴が大きくなっていき連日のように自殺者が続出。あまりの後追い自殺の多さに、マスコミは及ぼす影響を考慮してテレビの報道を控えたほどであった。

 ガロ解散後、特に目立った活躍の無かった、トミーこと日高富明。

 回ってくる仕事は譜面の読めないアイドルが憶える際に聴く、仮テープの吹き込みだったという話も。

 まさか、そのアイドルの中に、岡田有希子も含まれていたりしたとか。

 過去の栄光を引きずり、鬱積する現状への不満に苦悩し、酒の量は次第に増えゆき、体中に斑点が出るほど肝臓を壊すまでになった。

 自殺の原因は、肝臓障害の悪化を苦にしてとのこと。

 屈辱的でもあった、譜面も読めないアイドルのための仮テープ吹き込みの仕事。

 その苦々しくもあったアイドルが、自ら命を絶ち、後追い自殺が続く中で、あの人は何処?状態の彼が、どさくさに紛れて、ひっそり、この機に乗じて、自殺報道自粛の最中に、人知れず死ねば世間の注目もそれほど浴びずに、親類への迷惑も最小限におさめられると考えての行動であったとも、充分考えられるのではないだろうか。

 飛躍している話に聞こえるかもしれないが、これは僕の身近で極めて近い話を経験したことがあるので、既視感を感じてしまったのである。

 またもや廃墟の暗い一室にて、そこに埋まっていたストーリーを汲み取り、いたたまれなく、胸を強く揉みしだかれながらも、無上の感慨に浸り切る、廃墟探索者としての収穫に深く酔いしれる、口を真一文字に結んだまま部屋の中央でしばらく棒立ちになっていた・・・僕なのであった   



オカルト茶屋-39
 机の一番上の引き出しには、女学生らしい細々としたコンパスなどの文房具類。

 富士銀行東青梅支店のオープンを知らせる小冊子。

 ちなみに、富士銀行は現在のみずほ銀行。



オカルト茶屋-32
 蹂躙された、女学生の思い出。

 お元気で、いらっしゃるのか   



オカルト茶屋-35
 彼女は、有名な製パン会社へ入社。



オカルト茶屋-27
 一冊のミニフォトアルバムを発掘。

 奥多摩周遊道路を疾走する、初代のホンダシビック。

 初代シビックの生産が、1972年から1979年なので、他の残留物との照らし合わせても整合性はある。



オカルト茶屋-28
 大型バスの下で整備の腕を振るう、親父さんだろうか。



オカルト茶屋-29
 ペットショップで買えば高そうな犬も飼っていた。



オカルト茶屋-30
 女学生の部屋にあったフォトアルバムだというのに、人物はこの親父さんしか写っていない。

 カラー写真。

 中学生か高校生のあの男性の遺影写真は、年代物の白黒写真であった。

 つまり、息子さんを若くして亡くされてしまったのが、このバス整備士の、親父さん。長女がこの部屋の主、か。

 母親の痕跡は見当たらない。

 息子が自殺をした(噂では)後に家族関係が悪化をして、離婚をしたのではないだろうか。ずっと父子家庭であったと。



オカルト茶屋-31
 バスを整備する親父さんの写真ばかり。

 長女の女学生も、油まみれで働く父の姿がよっぽど頼もしかったのだろう。



オカルト茶屋-41
 彼女の幼子時代のちゃんちゃんこか。


 この後、過去へ遡ったような遺構のようなトイレに行くが、そのトイレの壁には、意外なポスターが貼ってあったのだった   




つづく…

「子息の逝き場所」湖のきわ、廃墟、オカルト食堂.5

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