回廊ペンション-57
 ドアの表面には、以前の探索者が残していったと思われるメッセージが残されていた。

 何を伝えたかったのか   



回廊ペンション-58
 一階は畳の座敷部屋。

 この部屋には、上階からの階段出入り口と、同じ階の隣室に繋がるドアがあった。

 プレイルーム、おもちゃ王国   

 山のようなおもちゃで溢れる部屋なのかと期待で胸も高鳴る。



回廊ペンション-59
 残念ながら、鍵は閉まっていた・・・というより、ドアノブがもぎられている。

 これぞ、という部屋のドアノブは、オーナーに見透かされているのか、警戒心もあらわにドアノブを抜き取ってある様子。

 

回廊ペンション-60
 構造的に、窓から一旦外に出て、プレイルームの外側の窓から入れるだろうとうの想像は容易にできた。



回廊ペンション-61
 大人でも魅惑的な響きを感じる「おもちゃ王国」という甘美なワード。

 山のようなレゴで床が埋め尽くされ、レゴの間を、プラレールのレールが敷かれている。テレビゲームは、プレステ2あたりだろうか。携帯ゲーム機は、PSPにDS。Wiiもあるかもしれない。

 ディズニーの絵本があり、ドンジャラもある。ボードゲームの定番、人生ゲームも、デビュースオーナーの意見を反映して置かれていそうだ。

 ペンション、ソワールデビュース相模原に用意されていた、子供のための楽園、おもちゃ王国に、入れないものかと、外側から回ってみることにした。



回廊ペンション-62
 案の定、外伝いに入れそうだ。

 しかし、風化なのか、荒らされたものなのか、荒廃が激しい。歩くたびに倒木やコンパネと体が接触しそうになり、勢いよく倒して雪だるま式に大事になってはいけないと、肩を俊敏に揺すって障害物を避け進んで行った。



回廊ペンション-63
 途上国のスラムでもあるまいし、これは酷い眺めだ。

 デビュースのオーナーは、何を創造しようとしていたのか。これが作ろうとしていた最終形態なのだろうか。



回廊ペンション-66
 オーナーの攻防も虚しく、間延びした口を開けたままのおもちゃ王国の窓。
 


回廊ペンション-64
 レゴのブロックなど一片も無い。

 おもちゃ王国は存在しなかったのではないか。部屋だけは用意したが、子供連れの客は来ず、企画倒れに終わってしまったと。



回廊ペンション-65
 子供の存在を唯一主張するシール。

 ローランド・エメリッヒ版「ゴジラ」のシール。

 1998年(平成10年)公開のハリウッド映画。



回廊ペンション-68
 おもちゃ王国が肩透かしに終わったところで、いよいよ、空中回廊を周遊してみることにする。

 どのくらいの頻度で物好きな人がここを訪れているのだろうか。デビュース館内までは来ても、この回廊は見るからにヤバそうなので、普通は歩いてみようとは思わないかもしれない。

 柔そうな鉄パイプの柱一本ぶつかったら、崩落して窒息死だという覚悟を持って、歩き出した   



回廊ペンション-67
 本来は、階層ごとの延長テラスなのか。複数階の構造を持つステージなのか。いずれにしろ、建築基準法はことごとく無視している。



回廊ペンション-69
 蛍光灯設置済み。

 まさか、ここで夜にバーベキュー?



回廊ペンション-70
 2キロ手前に看板を設置していたが自主撤去。捨てたままにしてある。



回廊ペンション-71
 空中回廊の突端に椅子が置いてある。展望台だろうか。さぞ見晴らしはいいことだろう。

 住人だったホームレスが好き勝手に各所に配置をしたのかも。

 オーナーが今もたまに来てあそこに座って景色を楽しんでいるとはとても思えない。



回廊ペンション-72
 踏み外せば、落下。少しの振動で上から崩れてくれば頭蓋骨骨折。危険しかないが、僕の旺盛な好奇心が歩みをやめさせない。
 


回廊ペンション-73
 屋外倉庫のようなものか。

 引き出しやロッカーの中は全て空。



回廊ペンション-75
 流しのシンクを取り外し裏返してそれを置いて通路代わりにと、発想が常人のそれではない。

 何を実現したかったのか、理解することは困難。

 フランク・ロイド・ライトの思想を受け継いでいるだなんて、よく言ったものだ。

 当初僕は、この建築物は、廃墟になってから住み着いたホームレスが自分の理想の王国を築こうと、他から廃品を拾って来ては、コツコツと手作りで仕上げていったとばかり思っていた。

 しかし、例の背筋の寒くなるホームページや、ツギハギビルの存在を知ることになり、独特のソワール建築ともいうべき工法を目の当たりにして、この目の前のいびつな空中回廊も、100%、彼の手によるものだということを確信したのである。



回廊ペンション-76
 補強のつもりで重ねられた木材。支えるのは細い丸の鉄パイプ。

 床の隙間からは数十メートル下が見える。

 歩いている自分が言うのもなんだが、やめておいた方がいい。

 僕は運が良かっただけなのだと思う。



回廊ペンション-77
 一応階段はあるが、それは板切れやコンパネを重ねて傾斜させているだけのもの。

 上の階に行くために傾斜を登る時は、膝を付いて赤ん坊がハイハイするように這いながら両の膝頭と手首の四点を接地させ足代わりにして少しづつ進んだ。

 そうでもしないと立ったままでは不安定過ぎて今にもパレットとコンパネの層が崩れそうなのである。

 あの懐かしい感覚に似ている。まさにあんな感じ。

 コナミが発売をしたファミコンのディスクシステムのゲーム「バイオミラクルぼくってウパ」の赤ちゃんのキャラがするハイハイをするあの時の操作感覚と、自分が今やっているハイハイの移動がなぜか、時を超えてピタリと重なり、今の自分が昔の自分に動かされているような妙な感覚に陥ってしまった。

 それほど、今この歳でハイハイ移動をすることに、自分が驚き、説明し難い違和感を感じているのだろう。



回廊ペンション-74
 ここにピアノを置いて、コンサートをやっていたとは、その危険性を当時誰も指摘しなかったのだろうか。

 もしかしたら、ビニールシートを隙間なく敷いて虚飾のステージとして見せていたのかもしれない。



回廊ペンション-78
 下の階層、隅々まで・・・自分の目と鼻と手と足で確かめてみるしかない   



 
つづく…

「決死の陥没回廊巡り」空中回廊のある、廃墟ペンション.7

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