ジェイソン
 全国には”ジェイソン村”という名前の心霊スポットがあちこちに散在している。

 単独の廃屋や廃墟工場のことをそう呼ぶこともあるが、”村”と言うだけあって、ある程度のまとまった廃集落や廃村のことをジェイソン村と、各々地元の先輩などから教え聞いて受け継がれている場合が多いようである。

 なぜジェイソン村という名前なのかというと、まず映画「13日の金曜日」の殺人鬼ジェイソンから来ているのは間違いない。

 心霊スポットに訪問するのは、主に、高校三年生以上のヤンキーと呼ばれる、不良グループに属した若者達。

 免許と車を持っていて、夜に暇を持て余して、女性関係が派手な郊外に住むヤンキーらが、「ちょっくら、怖いもんでも見に行くべ」と、男女のグループで廃墟に行って心霊スポットでキャーキャーと黄色い声を聞いて男は股間を固くしつつその場は大盛りあがり。

 ジェイソン村という名前が登場する前は、例えば、自殺者のあった廃屋で故人が「芳雄」さんなら、「ヨシオハウス」とか、「ヨシオの館」と呼ばれ、それは今でも続いているが、その言葉のセンスには、ヤンキー独特のボキャブラリーセンスが感じられる。無いものから無理くりひねり出すような。

 ジェイソン村は別に斧を用いた惨劇のあった家でもなんでもない。同行する女の子に恐怖心を植え付けるために、演出のひとつとして、ホラー映画「13日の金曜日」が大ヒットした頃に、ジェイソン村という言葉が誕生したのではないだろうか。

 あまりにキャッチーな名前の「ジェイソン村」は、映画の浸透とともに、ヤンキー・コミュニティーのバイクや車といった機動力、ヤンキーの先輩後輩の人間関係がもたらすネットワーク、などによって爆発的に拡散されてゆき、ネットもまだ無い時代に、全国津々浦々、流布していったのだろうと考えられる。

 あと、雑誌「GON」のような、コンビニでお弁当を買うついでに雑誌を買う層の人向け(ヤンキーの中の知識層)のサブカル雑誌も、ジェイソン村の伝播に貢献したことだろう。

 調べてみると、僕の自宅からそう遠くないところにも「ジェイソン村」と呼ばれるスポットが存在していた。

 情報としては、山の中にバリケードがあり回り込めそうだというだけで、それ以上の記述は無かった。

 相模湖の湖畔。

 期待もせずに、近場に別の用事もあったことから、その「ジェイソン村」に寄ってみることにした   
 


ジェイソン村-55
 アスファルトの細い道はやがて砂利道に変わった。オフ車でもないスクーターをガタガタと振動させながらなおも進むと、右に地面に刺さった小さい看板が見えてきた。

「Uターン場所 この先100m」

 看板の内容は車のことを言っているのだろうからまだ行けるということだ。さらに進む。

 竹林が影をなす自然のトンネルをくぐって行く。

 白いポールが立っていた。地面に浮き出る石はゴツゴツと荒くスクーターの小さいタイヤではとても無理。黒と黄色のトラバーもここから先は歩いて行けと言っているようである。

 手前には民家が二軒あった。民家といっても、あえて森のような場所に建てた洋風の別荘のように見えた。

 看板の言うUターン場所は、民家前の砂利道であり、トラバーより奥は普通の人は行かない、「ジェイソン村」があるのだろうと思われた。

 バイクを降りた。

 僕は白いポールの横を通り過ぎて徒歩で森の中に入って行った。



ジェイソン村-54
 樹々が日を遮っていて薄暗さが不安を募らせる。

 下がかつて道だとしても、幅は軽自動車がギリギリといったところ。

 進んでも森しかないだろうと思われた。



ジェイソン村-53
 僕の見立てでは、バリケードがあってその裏に廃墟になったプレハブの建設事務所でもあるのだろうと想像していた。

 森が深まるだけのように感じてきた。



ジェイソン村-52
 熊は出ないだろうけど、得体の知れぬ動物に襲われそうな気がしそうなほどに、この森は僕を不安にさせる。



ジェイソン村-51
 バリケードの情報が無かったらとっくに引き返していた。

 生い茂る草むらを前進し、倒木の枝をポキポキ折りながら踏み越える。



ジェイソン村-50
 物理的に跳ね返されるまで直進しようと心に決めた。



ジェイソン村-49
 視界が開けた。

 建設現場の飯場でもいい。

 ゴールを提示してくれ。

 暗中模索で歩き続けることほど辛いものはない。


 その時、先に人工物が見えて来た。



ジェイソン村-46
 あった、バリケード。

 回り込む必要がなく、真ん中が打ち破られていた。

 この裏に放置された事務所があるのだろうか。

 裂け目より侵入を果たした。
 


ジェイソン村-42
 想像をだいぶ裏切られた。

 山奥にフェンス?

 枯葉の絨毯の下には、アスファルトではない、カチカチに固められたコンクリートが奥へと続いている。

 どれだけ歩けばいいのか。



ジェイソン村-41
 行き止まりのようにも思えたが、自分の背丈よりもある密林の中に顔から突っ込んで行ってみた。



ジェイソン村-40
 失われた道路の、廃道とかいうやつなのか。

 驚いたことに、ガードレールと廃道らしき道が山の奥へ奥へと伸びていた。



ジェイソン村-39
 傾斜もあって息が荒くなる。



ジェイソン村-38
 この先に何があるのか見当もつかない。

 汗が吹き出し数時間ぶりにボトルの水を飲んだ。

 足が重いが前に進んだ。



ジェイソン村-37
 道路は右にカーブしていて、ガードレールもそれに沿ってしなって先に誘導してくれているようだった   




つづく…

「山の森の奥の正体」レイクサイドのジェイソン村.2

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