廃墟ラーメン屋-90
 遺体の発見された廃墟ラーメン屋を目指して、遥か埼玉県は春日部市までやって来てしまった、もの好きな僕。

 一階のどさん子ラーメン屋を舐めるように検証したところ、ニュースで報じられたような、亡き骸のあったと思われるような場所は特定できなかった。

 報道では、ラーメン屋で、とのことだったのだ。

 ならば、逗留中の彼が、外部からの侵入者があった場合に防御態勢をとる時間が少しでも稼げる二階が本命だろうと、今度こそはと、確信に満ちた力強い足取りで、二階の焼肉屋へと、階段を駆け登って行った。



廃墟ラーメン屋-70
 二階、焼肉屋「もーもー亭」の店内。

 入り口前で一分間の黙祷を自発的に行う。

 ドス黒い血で一面染みたような気色悪い色彩の絨毯が不安をより一層掻き立てる。

 無秩序に撒かれた残留物は、心霊スポット巡りのヤンキー達の仕業か、または、この場所で生涯を終えた彼の暴発的に猛り狂った生前の痕跡であるのか。

 凛と、張り詰めた空気の漂う店内へ、僕は足を踏み入れた。



廃墟ラーメン屋-91
 彼のメッセージでも書いていやしないかと判読を試みるが、数字がうっすら読めるだけであった。

 伝票を挟んだボードをカウンターの上で執拗に擦った跡がある。

 ウキーッと、感情をどこにぶつけていいのかわからない幼児がやるような行為。

 廃墟焼肉屋に長期間引きこもった彼の精神状態の乱れを物語っているようでもあった。



廃墟ラーメン屋-79
 人がゴロリと寝ていても様になる荒んだカウンター下。



廃墟ラーメン屋-78
 コカ・コーラの瓶用の冷蔵庫があった。



廃墟ラーメン屋-80
 調べたところ、この塗装のタイプの冷蔵庫は1960年代のものらしい。



廃墟ラーメン屋-81
 店の開業はそこまで古くなさそうなので、まだ店頭が瓶の時代だった1980年代頃に中古の冷蔵庫を買ったのだろう。

 世の中はとっくに缶になっていたのに、時間差のようなものがあって、お店で飲むコーラがしばらく瓶で頑張っていたのは今思うとなぜだったのだろうか。

 瓶という付加価値を盛って高く請求することに正当性を持たせていたのではないだろうか。

 どさん子のようなラーメン店で『たかがコカ・コーラが300円!? 』でも今となっては見かけなくなくなった瓶入りならしょうがないか、高い理由は中身の製造過程が缶と違っていて、原材料にも良いものを使っているからだろうし、味もなんとなくだが瓶の方が美味いような気がする、と、ちょっとした都市伝説が囁かれていて、妥協点をちらつかせられ、財布の紐を渋々ながら緩めた、庶民が情報に乏しかった頃の企業の策略にまんまと乗せられていた、客。



廃墟ラーメン屋-83
 階下のどさん子と違い、ウィスキーの注文が多かった焼肉屋。

 古そうなサントリーのロゴ入り、アイスペール&ピッチャー。

 綺麗なら欲しい人もいそうだが、取れそうにない汚れがこびり付いていて、拾って洗おうという気にはならなかった。



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 年輪のような柄の高齢者好みの湯呑。



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 どさん子の厨房より不快感は低め。



廃墟ラーメン屋-84
 仮に、遺体発見現場をこの目で確認できたとして、それがわかったらどうなるのかと、東京の西の端から馳せ参じたことが報われるのかと、少しの間、天井を仰ぐ。

 全てが、虚しくなってきた。



廃墟ラーメン屋-86
 キッチン。

 廃墟になってからフラリと来た彼。

 簡単な料理ぐらいはここでしたのかもしれない。

 彼は長いことうつむき、急に顔をあげたかと思うと、ステンレス製の棚を蹴っ飛ばした。

『俺は、おふくろの手料理が食いたいんだ!!!』

 この配置の乱れようは、(そうでないと)説明のしようがなかった。



廃墟ラーメン屋-88
 閉じた画像は割愛しました。

 特筆するものは入っていませんでした。
 
 背中がほんのり温かくなるような感覚があった。きっと、気のせいだろう。



廃墟ラーメン屋-89
 振り向くと、本来ならカウンターにあるはずの、客用のハイチェアーが、不相応な場所に不気味な存在感を放ちながら、若干傾き加減で所在なさげに、途方に暮れていた。

 いや、まさか、、、ロープを垂らし、椅子を踏み台にして・・・・・・

 胸くその悪い、えずいて汚濁汁を吐きそうになる、嫌な予感がした。




つづく…

「ファインダーを濡らす、探索者」遺体の発見された廃墟ラーメン屋に行って来たよ.8

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