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 この建物がまぁ焼肉屋ではないだろうことは入って三分ぐらいしてから僅かずつではあったが疑念を抱き始めてはいた。

 西洋の王室や日本の宮中、そして国会議事堂の赤絨毯の格式にあやかっていたのか、焼肉屋であったとしたら場違いなロイヤルレッドの絨毯で敷き詰められた館内。

 だったら結婚式場かと普通は考えるが、広いホール裏側には朱色の祭壇がある。

 その祭壇は一つ一つの段のマチが非常に狭く、お供えとして花瓶や水入れの器などとても置けない、せいぜいローソクぐらいの、実用性の無さそうな見せかけの祭壇のようにも思えた。

 油膜のベトつきや煤煙の黒ずみが無いことばかりにずっと注目してしまっていたが、決定的な厨房施設が存在しないということに気づいたのは、ここから帰って来てかなり時間が経ってからであった。

 廃墟にいる時はあそこもここもと自分だけのカットを追い求めての撮影に必死である。いつここから出て行けと言われてもおかしくないようなことをしているので、常に追い立てられているような気忙しさがある。

 なので廃墟の探索検証とは言っているが、現場ではそう深く物事を考えている暇などないというのが正直なところだ。

 この建物の正体は何であるのか、濃霧の森を彷徨しているような判然としない対象物に頭を悩ませていたところ、勇気ある若者が  実際年齢を聞いたわけではないので推測でしかないが文面からは若そうではあった  思い切った証言をしてくれたのであった。

 彼は以前ここに訪問をしたことがあるのだという。

僕が行ったときは電話の請求書が落ちていまして、まさに宗教法人の名前がかかれていました。



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 彼は勿体ぶっていたわけではないのだろうが、その宗教法人の名前までは言わずに言葉を濁らせていた。ハッタリとは思わなかったが、実名告発でもないし、そこまで隠す必要はあるのだろうかと、喉に刺さった魚の骨のように僕の心の奥でそのこと(宗教法人の名前の告発)が引っ掛かっていたのは確かであった。

暴力団と宗教のきな臭いかかわりのなかで生まれた物件で、私が行った廃墟の中ではダントツにヤバイ物件でしたね。

 用心に越したことはない、そういうことだったのだろう。

 自分が得た情報を分かち合いたい気持ち  なんと親切なことか  はあるが、ネット管理社会の現代において、暴力団絡みの事件に多少なりともとも自分が関わってしまって巻き込まれてはと、危惧したのも無理もない話である。



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 でも彼は、二度とこういう過ちを繰り返させないためにと、多摩湖の自然保護の観点からも、勇気を奮い立たせて、全てをここに公表してくれたのだ。

名前を出しても大丈夫か不安でしたので書きませんでしたが、他の方が書いている通り大古久山御所院です。請求書を撮影した写真があるので間違いありません。
 


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 この並びにある先程まで僕がいた、産廃の山と廃車のあった廃墟ラブホテル「赤坂」とここを含む続きの土地を僧侶が転売目的で購入。僧侶は儲けのためには違法行為も厭わないような輩であったという。そもそも宗教法人は秋田市の宗教法人であり、前住職が死んだ際に後の大古久山御所院住職が宗教法人ごと買い取ったという。

 ビジネス住職はこの土地の転売に失敗する。

 暴力団も加わり本堂(納骨堂)を建てて宗教法人を隠れ蓑にして自然公園を勝手に造成し産廃を大量に運び込んでいた、というのがここを舞台にした事件の真相のようである。

 ひろ様、ご協力、ありがとうございました。

 その一言が無かったら、ただの風変わりな施設探訪記として何も知らずに終わっていたところです。

 鑑賞物として口を半開きにしてただ眺めているだけではない、以前から僕が口を酸っぱく提唱してきた「語る廃墟」、今回もまた、社会性を重んじる素晴らしい読者の方の手助けにより、達成できたかなと、今、胸に熱いものがこみ上げて来ているところです。

 本当に、返す返すも、ありがとうございました   



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 ベランダに出た僕は、後の読者の方々の温かなサポートなど知る由もなく、ただ後方を振り返って、追っ手の侵入者が来やしないかな、なんていう確認に気を取られていた。

 いないようなので、向き直して進んで行き、角を曲がった。



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 緑が生い茂る赤錆びた鉄柵のコーナー。



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 インドの像や大黒天の置物が館内には脈絡なく置かれていたようだが、そんなのは訪問者によってか、とっくに持ち去られていて中はがらんどうであった。



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 ここを破壊していったおそらく地元のヤンキーの人は、そういった暴力団の絡んだ事件だとは知らないのでしょう。



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 なんとも贅沢な景色だが心中は複雑だ。



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 なりすましのような住職が、袈裟を着てここを歩いていたのか。



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 見晴らしベランダ、一周してみる。



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 行き止まり。



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 鉄骨がしっかりと組んであって、素人目には耐震性は高そうな気がする。



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 退廃美、目にも鮮やかな自然、事件の舞台に立つ。

 これらが全て無料なのだから、この趣味を続けない理由が見当たらない。



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 ヤンキーが片手間にやっていったにしては、作業的で規模が大き過ぎるかもしれない。

 意図的な証拠隠滅の可能性もあるだろう。



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 館内最終チェックを終えた後、もしかしたら旧焼肉屋の建物は山の下に埋まってしまっていて、その一端ぐらいは見えるのではと、寺院丘陵を下っていってみることに   




つづく…

偽装の森をゆく、探索者」産廃山脈の頂き、廃墟焼肉屋.5

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