田浦-57
 宗典君の廃屋を出て数歩進むと、僕の眼前にひろがっていたのは、田浦廃村の廃屋という廃屋が根こそぎ建設機械によってなぎ倒されて、形を留めないほど粘着質なまでに叩きのめされ、やりたてホヤホヤであるかのように、舞い踊る砂塵がみえるようなくしゃみの一つでも出そうな粉っぽい山盛りの瓦礫の残骸。

 都市に近く、無名というわけでもない、知る人ぞ知る、田浦廃村が、歴史の闇に、ニュースで知らされることなく、こっそりと、今、歴史の闇に葬り去られようとしていたわけなのである。

 ここを看取るのはもう僕しかいないのだという気概を胸に、今、最後の田浦廃村探索に向けてゆっくりと歩き出そうとしていた   



田浦-56
 側面は原型を保っているが、



田浦-58
 ここもまた前面の壁は取り払われていた。



田浦-59
 明日ぐらいには中の粗大ゴミなどは持って行かれていたのかもしれない。

 ギリギリで間に合った。



田浦-60
 どこも揃いも揃って、こうもそのままで出て行くものなのか。

 引越し先で布団は必要とするだろうに。



田浦-61
 隙間なくスーツなどの上着が掛けられたタンス。

 これでは引越し先でしばらくお出かけはできないということになる。



田浦-62
 次に何がここに出来るのだろうか。

 発電所横の狭い一本道を行った先の袋小路の土地。

 用途は極めて限られている。



田浦-63
 コニカEEマチックデラックス

 コニカはミノルタと合併してコニカミノルタとなったが、同社は業績不振から2006年にカメラ事業から撤退している。コニカミノルタの一眼ブランド「α」はソニーに受け継がれた。



田浦-64
 1965年3月1日(昭和40年)の綺麗な毎日新聞があった。

 1965年といえば、

 沖縄の西表島で発見されたヤマネコが新種と鑑定され「イリオモテヤマネコ」と命名される。

 トヨタ自動車が「スポーツ800」を発売。
 
 「聖教新聞」が日刊化。

 国鉄がみどりの窓口開設。

 など。



田浦-65
 ネジを巻いたら今にも動き出しそうな柱時計。

 それにしても合板バレバレのの安っぽいデザイン。



田浦-66
 幼稚園ぐらいの子供がいた家庭だった。



田浦-69
 旅先で買った未使用の絵葉書が大量にあった。その中から一つをピックアップして立て掛けてみた。

 まだ幼いお子さんは野生の猿に大興奮したのでしょう。



田浦-67
1969.7.20ー8.11

HOKKAIDO ADVENTURE TOUR

 砂壁に貼られたままの、北海道の地図が書かれたハンカチ。

 走破した道のりを丁寧にペンでなぞってある。二十日間もかけたということは、この家の長男の大学生だろう。

 時間に余裕のある大学生が、バイトをして貯めたお金で買ったバイクか自転車で北海道を隈なく旅行をした。

 地平線まで伸びる道路に目が眩んだ。道端で売っていたメロンを貪り食った。屋根もない無人駅に衝撃を受けて写真を撮りまくっていたら、学校帰りの中学生が不思議そうな顔をしてこちらをみていた。。地元横須賀では見たこともない不味そうな缶ジュースを売っていた。異国のような北海道、そう、彼にとってまさしく人生初のアドベンチャー。

 父さん、みてくれよ、神奈川県の何倍もあるあの広い北海道を隅々まで走りきったぜ。髪を肩まで伸ばした息子が北の地で流した汗と涙の染みたハンカチを誇らしげに壁に画鋲でとめたのだ   



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 札幌時計台の写真。

 隣は八ヶ岳「美ヶ原」のペナント。

 全ての楽しかった思い出を置き去りに   



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 カレンダーは意外に新しくて「2004年」。

 1960年代に新築の家を購入したとして、40年もここで暮らしていたのだろうか。

 だとしたら、あまり昇進とかには縁のなかった人であったかもしれない。



田浦-72
 思い出の詰まったかつての我が家が解体されますよと、連絡などいっていないことでしょう。

 日本の、いや、世界のどこかで、これをみて昔を振り返っていただけたなら、偶然とはいえ、最後の日に駆けつけたかいがあったというものです。



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 土石流で被災したような廃屋にも入ってみようとしたが、身の危険を感じたので、ブロック塀の前で上を見上げるだけにしておいた。



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 元住人の皆様、田浦廃村最後の日を、しか目に焼き付けておいてください   



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 元田浦廃村の住人が何も知らずに数十年ぶりに我が生誕の地を訪れてみたら、メガソーラー施設とご対面する、そんなこともこの先あることでしょう。



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 より奥へと行くと姿を保っている廃屋があったので、ここにも入ってみることに   
 



つづく…

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