行川アイランド-147-60
 多くの人が目もくれない、正規ルートから外れた山道を行ってみれば、人とは違う何かとんでもないものが見られるかも、という期待と誘惑に駆り立てられて、僕は急峻な斜面を登ることを選んだ。

 すでに何度かそれをやり、見えたのは断崖の下にひろがる海ぐらいのものであった。

 いたずらに体力を消費してしまっており、ペットボトルの水は残り半分を切ってしまった。

 それなのに、底知れぬ好奇心を抑えることが出来ずに、山を登りだしてしまっている僕がいた。



行川アイランド-146-59
 引き摺り込まれてしまいそうな穴。

 のぞいてみると、暗くてよくわからないが、自力で出ることは困難ぐらいの深さはありそうだった。つまり、人間の背丈以上は余裕にある。

 これを読んで、私も廃墟の行川アイランドに行ってみようかしら、と思った人は、くれぐれも注意された方がいい。

 間違って落ちてしまったなら、命は助かったとしても、地の底で助けなど永遠に来るはずはないのだから。



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 タクシーなどに使用するLPガス容器の置場所となっていた。

 海洋系テーマパークの片隅になぜ。




行川アイランド-141-57
 道なき道をと言っても、僅かながら人の痕跡を窺わせる踏みしめられた土や、枝の反りはあった。あっても若干なので、この山道を使用していた人はごく限られた人であっただろう。

 大量の発汗と呼吸の乱れを覚えた頃、視界が開けてきて青空が見えた。

 山頂に到達したようだ。

 板が刺さっていた。

魚つき保安林 昭和47年度 千葉県知事

 駐車場で会った門番の役目を果たしていたおじさんが言うには、三ヶ月に一度ぐらい、市役所の職員が廃墟の行川アイランドに内に入って保安林の調査をしていると教えてくれた。

 ここまで来ていたらしい。



行川アイランド-142-58
 山頂からの眺望は素晴らしいが、ここを眠らしておくのは本当に勿体無い。



行川アイランド-148-61
 保安林調査場所の山を降り、再び荒れた園内に復帰。

 ボルネオの原始林のように草木生い茂り枯葉積もる正規周遊ルートを進んでゆく   



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 もはや、文明の存在した証左のようなコンクリート円柱のゴミ箱を発見。

 ゴミ袋を使用しない、ステンレス製の取替用網はエコと使いやすさを兼ねたアイデアものだ。雨が降ると、ゴミ袋では水が溜まってしまい水瓶のようになってしまう。考えに考え抜かれた最終形態がこれであった。



行川アイランド-152-63
 周遊路の脇に、捕獲用の檻。

 行川アイランドの失態により大量繁殖してしまったキョン用か。

 仕掛けは開いたまま。

 閉園当時からこのままなのだろうか。



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 檻のある横の木の枝にこんなプラスティック製プレートが括られていた。

有害鳥獣
捕獲 等

 捕獲されているかを確認しに、人が定期的に訪れている様子。その際の日付が記されている。最新のもので「平成29年3月31日」。

 現役稼働中かどうかは微妙なところ。



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 動物好きの子供らが、黄色い声を弾ませながら通った歩道に当時の活気は無いどころか、もはやクメール遺跡のように、その跡はジャングルに見え隠れし、千葉の自然に還ろうとしている。



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 干上がってはいるが、川が流れていたらしい。



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 川の流れを見下ろす、ガーデンテラス。

 きっと軽食類を出す売店があって、簡易的なテーブルと椅子が並んでいたのではないだろうか。

 川のせせらぎを聞きながら、お母さんの作ったサンドイッチを頬張るお父さんと子供達。

 こうも変わるものなのかと、ため息をつくことさえ忘れ、オリンピック需要で都内に乱開発されている建物の遠くない未来を憂いた。

 大部分が、こんな風になってしまうのではないだろうかと。

 

行川アイランド-163-68
 岩壁伝いに進んで行くと、相当な力作のグラフィティがあった。

 ちなみに、これはスプレーのみで描く「フリーハンド」と呼ばれる手法。

 一夜に何箇所も描く場合は「BOM」と言う。

 今また話題のバンクシーは、予め型紙を作っておき、型紙の上からスプレーをして描く「ステンシル」の技法を用いる。

 フリーハンドの連中は楽で簡易な「ステンシル」を見下して認めないのだという。

 バンクシーも当初はフリーハンドだったが、フリーハンドは時間を要するため警察に捕まるリスクが高まる。ステンシルだと短時間に大量の作品を描くことが出来るため、メッセージをより多くの人にみてもらえることが可能となるので、利便性や活動の幅をひろげることを考えて、バンクシーはフリーハンドから次第にステンシルへと移行していった。

 最近、バンクシーに関する本を数冊読んだので、そこで得た知識です。



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 そして、このフリーハンド、政治的なメッセージや風刺は元々描かれない。仲間同士で共有する言葉で表現構成される。



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 描いている内容が良く理解出来ないというのは、本道のスタイルに忠実であるということになるのだろう。



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 またトンネルが出現。



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 真っ暗なのでフラッシュを使用。



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 少し進んで曲がると、その先はなんとも長く彼方へと続いていた。




つづく…

「内部崩壊の隧道」落日の廃墟、行川アイランドに行って来たよ!.5

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