川崎不法占拠-16
 川崎駅から数キロ、以前あった老朽化したビルや粗末な家は一掃され、無機質な石のタイルに張り替えられたその土地の上には、今では燦々と輝くショッピングモールや高層マンションが競うように建ち並んでいる。

 開発の波は、ここ、戸手四丁目の不法占拠地帯寸前まで迫ってきているが、”ここ”だけは違法に河川敷が占拠されていった1960年代当時の姿をそのままに残している。

 共同体のような業者がすぐそこにありながら、年代物のブラウン管テレビは不法占拠された土地の上にさらに不法に投棄されているという、二重の責苦を課せられながら、肩身の狭い余生を送らされているようなのであった。



川崎不法占拠-17
 割れ窓理論というものがあるが、どこ吹く風かと、21世紀になって様変わりした今や高層マンションCity川崎の真空スポットに、打ち捨てられた不法廃棄物が、次から次へと無秩序に姿をあらわす。



川崎不法占拠-15
 蛇の目ミシン。

 多摩川に流されないだけ、マシなのだろうか。



川崎不法占拠-18
 河川敷に勝手に家を建てたこともあり、当然ながら当初は電気ガス水道等のインフラは存在していなかった。

 うんこも多摩川に垂れ流し。

 家が次第に増えていき、町が形成されるようになっていった。

 人とは勝手なもので、いや、人として当然の権利であるのか、町民はいろいろと不便を口に出すようになっていった。

 特に電気の必要性を痛感したそうだ。

 お願いだから電気を通してくれと、地域住民は県の土木事務所に何度も押しかけたが、土木事務所の所長は首を縦に振ろうとはしなかった。

 そこで、有志が起こした自家発電に頼るようになる。電気の発電は夜の九時までに制限。

 それでも、夕方からはテレビもみられるようになった。

 しかしながら、快適な電化生活を心より望む住民有志が、自主的に役所と粘り強く交渉。

 これは、市と県の土木局を納得させ、建設省の許可を得る闘いであったのだ。

 朝鮮総連の全面的な支援のもとに、日本共産党の議員達が先頭に立って役所との交渉に当たった。最後には東京電力も後押しをしてくれたという。

 1964年10月10日、東京オリンピック開会式の日。

 住民有志が建設省に出向き、住民が河川敷に住まざるを得なかった事情を説明し、電気がなくて困っている現況を訴え、最低限の文化生活を営む権利を主張した。

 いろいろ話し合った後、もし許可が降りない場合は、ちょうど今はオリンピックが行われている時であるから、国際世論に訴えてでも勝ち取る決意であることを伝えた。

 一見して、脅しともとれるが、住民達は不便さから必要にかられ、並々ならぬ覚悟の上の陳情であったようだ。

 そして、当時まだ町内に臨時で一本だけしか入っていなかったK家の電話に、13日までに連絡をしてくれるようにと約束を取り付ける。

   13日の約束の日、その家の人が飛ぶようにして、建設省からの伝言を住民のもとに持ってきた。

 電話での返答。

「やむを得ないでしょう」

「それは許可をするということですか」住人の一人が問い直す。

「そういうことです」

 次の瞬間、皆、お互い手を取り合って喜んだそうだ   


 以上、この本を参考にさせてもらいました。ご興味のある方はお読みになってはいかがでしょうか。

 現在絶版になっているので僕は図書館で借りました。
神奈川のなかの朝鮮 (歩いて知る朝鮮と日本の歴史シリーズ)
『神奈川のなかの朝鮮』編集委員会
明石書店
1998-08-17



川崎不法占拠-19
 ということで、電気は電線から配電されているが、ガスはプロパンガスで賄われている。



川崎不法占拠-21
 痛ましいぐらいに赤錆のトタンが脆くなっている。

 電気が開通した当時は、中から歓声が轟いたことでしょう。

 今ではご老人が迫る退去日に慄きながら、ひっそりと息を潜めているのであろうか。



川崎不法占拠-20
 あくまでも仮設であることを主張していつでも移動撤去可能なトタン建築ばかりである思ったら、なかなかしっかりとした造りの木造建築の家屋も見られた。



川崎不法占拠-22
 背後に迫るタワーマンションとは別世界の様相を呈する。



川崎不法占拠-23
 もはや、この町が川崎市の再開発を堰き止めているといった構図。



川崎不法占拠-24



川崎不法占拠-25
 昭和の廃墟における洗濯機「愛妻号」の多さは特筆もの。



川崎不法占拠-27
 広重ブルー、北野ブルー、戸手ブルーかっていうぐらい、青に彩られている。



川崎不法占拠-28
 生活の場に張り巡らされるバリケードというバリケードに、身も引き締まる。



川崎不法占拠-26
 そうかと思えば、一般の民家と何一つ変わらない生活を送っている人の姿もある。



川崎不法占拠-29
 戸手教会に株式会社木下の方へも、踏み入ってみることにした   




つづく…

「無秩序スラムの町」川崎の不法占拠朝鮮人部落に行って来た.4

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