回廊ペンション-94
 デビュースオーナーの夢の王国の跡を辿る旅。いつしか僕はこの探索をそう位置づけていた。彼の叶わなかった夢の空いたピースを一つだけでも多く埋めてあげようと、おせっかいだとは思いつつも、誰よりも精力的に、時に”シャーー”と、極度の緊張感と高揚感の相克により呻き声にもならないような空気を引っ掻くようなひりついたような声を喉から絞り出しながら、縦横無尽に、危険な一本橋でさえ(画面右端のような)、いざという時には渡る覚悟でさえいたのである。さぞ失意の底にいるだろう彼に、おまえは、ここまでのことを成し遂げたのだよと、僕が身を挺して、彼の大仕事がいかに、少数派には違いないが、ある一定数の人々の心を、少なからず動かし、果たせなくとも、夢を追いかけるということは、人に希望と活力を与えられるのだよと、彼に、気づいてもらうために、僕は、あらゆる危険を顧みない覚悟でいたのだ   



回廊ペンション-98
 ブーツの爪先を間に突っ込もうものなら、コンパネがチューリップのように逆ハの字に咲きかねない、危険性をはらんだ溝を見つける。

 吸い込まれそうだと、生唾を飲み込んだ。



回廊ペンション-99
 仕事は滅法荒いが、人間誰しも一生のうち、自分の頭の中に描いた夢を、一体、何人の人が、このように現実に形に出来ると言うのだろうか。

 一生動かないで、守ったまま、このご時世、終わる人も多いだろう。いや、僕を含めてほとんどがそうだ。

 見習いたいところは探せば全くのゼロではなく、この胸に強く打つ何かが、彼にはあるような気がしてならないのである。



回廊ペンション-100
 決して悲観しないで下さい。

 再生が始まっています。



回廊ペンション-101
 ゴミ捨て場の拾いものではあるが、ソファーを並べて、学生や教授達が語らう、サロンをここに造りたかったのだろう。

 その志、いつか叶えと、未完成のピース、ここに残しておくことにしよう。

 嵌め込むのは、あなた(オーナー)ご自身だ。

 あるがままを彼や読者に伝えようと、縁のギリギリまで立って、汗が滝のように滴るなか、瀕死の撮影を敢行。

 その脆弱性ゆえ、浮遊感のある回廊。僕にはなぜかたまらなく心地がよかった。
 


回廊ペンション-102
 あの底には、グランドピアノか、ワゴン車か、はたまた、あの例のホームページにもある、古そうな観光バスが、あそこには眠っているというまことしやかな噂もある。

 それも、ひっくるめての、夢の跡なのではないのだろうか。



回廊ペンション-103
 単管パイプが複雑に交錯する。



回廊ペンション-104
 地下から何層ものステージを上がって来た。



回廊ペンション-105
 世界中の大概の大型建築を僕は見てきた。

 クフ王のピラミッドには、若さゆえのイリーガルながら、てっぺんまで登った。そこには、木製の囲炉裏の残骸のようなものが設えてあった。よくわからないが、きっと古代には、あそこにか鏡なにかを置いたのだろう。許せないのは、二三の吸い殻があったこと。

 内戦中のカンボジア、人のいないアンコールワット。ただ一人でいると、なぜか台湾の学校のセーラー服を着た少女がバケツに氷と一緒に入った缶ビールを売りに来たので、買い求めると、速攻、下痢をしてしまう。そのSINGAビアー、製造年月日を見ると、二年も前のものだった。

 万里の長城。チベットの仏教寺院。西アフリカ、ジェンネのモスク   

 それらと比べて、ともすれば、ただの廃材の塊にしか過ぎないソワールの建築が壮麗で厳かで神秘的であるとか、間違ってもお世辞でも言わないが、胸に引っ掛かる何かがあるのは、嘘偽りのないところなのである。



回廊ペンション-106
 最上階への階段だろうか。

 登ってみることに。



回廊ペンション-107
 バケツの意味。空のバケツを置いておくことで、貯った雨水を重しとして屋根の鉄板を固定しておく算段であったのだろう。その思惑は見事に打ち砕かれていたけれども。



回廊ペンション-108
 エンターテイメント・ステージの成れの果て。

 荒涼とした板張りの床がどこまでも続いていた。



回廊ペンション-109
 その頂きからは、息を呑む情景が眼下に展開していた   
 



つづく…

「ソワール総本山への旅立ち」空中回廊のある、廃墟ペンション.9

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