57
 今日も歯医者へ通院のキョーコさん。

 彼女にとって喜ぶべきか、悲しむべきか、歯医者の待合室はガラガラであった。キョーコさんたった一人しかいない。すぐに治療をしてくれたという。

 治療を終えてから、写真屋に写真を取りに行く。受験に提出用の写真を撮りに行ったのかもしれない。

 目的を終えたわけだが、彼女は家に帰らずに街をふらつく。

 雪が降ってきた。

 降りしきる雪の中、あの人はいないかしら、来ないかしらと、例の北陸銀行前のバス停留所まで探しに行ってみた。

 結局、一時間以上も北陸銀行前で待ち続けていた、キョーコさん。

 雪積もる停留所で少女がたった一人、あまりの寒さに、口から出た言葉は、「ただ雪が私を冷たくする・・・・・・」という、身も心も寒々とする、もう堪えられない、といった心情を吐露するものであったのだ。

 うなだれる、キョーコさん。足は引き寄せられるように、映画館へ向かっていた。
 
 先日、大興奮をした映画「グリース」をまたみたい、たまらなくみたい、と言い続けているのに、足を運んだ先の映画館で上映されていたのは(彼女が選んだのは)、虚を突かれるような予想だにしなかった、世界的大ヒットを飛ばしたホラー映画の第二弾、イタリアのヒッチコックと呼ばれる監督のあの作品であった。

 グリースに続き、その映画のどこにそれほど感銘を受けるのか推し量るのは難しいが、キョーコさんはかつて経験したことのない文字量、桁外れのページ数をもって、何が彼女をそこまで突き動かすのか理解に苦しむが、怒涛の勢いで映画の感想を語リ出すのであった。



19a
 1979 ねん  (昭和 54ねん)   1 月 1 9 日 (10 日) 0:48

今日で 冬休 み は 終り で した 。  た い した ことなか っ た ・
 今日  1 1 時 の汽車で 歯 医 者 に 行 って 来 た。
 すぐ や っ て く れた .  だ れも いな か っ た し . . . 。
 菅野時治 と い う 名 も あ っ た  ,   2時 だ っ て  .
 私は 写真 を  とり に行っ て ,  2時 に な る の を  そ こ ら へ ん を
 ぶ ら つ い て  ま っ た 。  雪 が  降 っ て 来 た .  だ いぶ ふっ た _
 私 は   2時 ち ょ っ と  すぎ か ら  病 院の あた り をぶ ら
 つ い た .  手 は とても  つめ た く つ ら か っ た  .
 北 陸銀行 の  所で も  , ま っ て み た .  3 時 近くまで 待った.
 で も 見 られ な か っ た .  た だ 雪 が 私 を つめ た く す る
 ば か りで  . . . .  .  彼 は 見 えな か っ た .   まだ 病院に
 いるのか も  しれな い  又は  、  もう  ど こ か に 行 っ て し ま った
 のか も しれない  _  わか ら な い  .    彼 は 来 な か っ た .
 私 の 所 に は  ,   た だ  冷 たい 雪 が  降 る ば か り で
 か なしい で す 。  た っ た ニ 度 で あ なた を 愛して
 し まい .  又 ,再び  片 思  い の つ ら さ を あじ わ うのが
 い つ も い つも  私 一人で す  。  い つ も い つ も

自らの口で「たいしたことなかった」冬休みであったと総括をしてしまう、キョーコさん。文章からでは、ろくに勉強をした形跡は見受けられないようである。上の高校を狙ってやると口だけは勇ましいが、一目惚れした彼を走って追いかけたり、なぜこの時期に? と頭を傾げてしまう、映画観賞など、とても受験日が間近に迫った中学三年生の行動ではない。

>1 1 時 の汽車で 歯 医 者 に 行 って 来 た。すぐ や っ て く れた .  だ れも いな か っ た し . . . 。

街で評判の歯医者のはず。当時は今みたいに歯医者の数はそう多くはなかっただろう。地方だからなのか、衰退著しい街のせいなのか、待合室には、彼女一人しかいなかったという。キョーコさんも意表を突かれて言葉もないといった様子。

>菅野時治 と い う 名 も あ っ た  ,   2時 だ っ て  .

リーゼント頭の、容姿は切れ味の良いナイフのような彼だが、内面は熱せられたコークスのようにじんわりと温かそうな菅野時治に、キョーコさんは完全に心を奪われている。診察カードを盗み見ることに、罪悪感などこれっぽっちも無しのようだ。

>私は 写真 を  とり に行っ て ,  2時 に な る の を  そ こ ら へ ん をぶ ら つ い て  ま っ た 。

現像に出したフィルムと写真のプリントか、受験の申請用の証明写真を撮ったのか。それが終わっても、街中をぶらついていた。目的は、あれしかない。

>雪 が  降 っ て 来 た .  だ いぶ ふっ た

あの地に住む彼女が「だいぶふった」と言うぐらいなのだから、綿雪のような、街を埋め尽くすような大量の降雪があったことは想像に難くないだろう。

>2時 ち ょ っ と  すぎ か ら  病 院の あた り をぶ らつ い た .

受験生が我を見失い、豪雪の中、とっくに治療を済ませた歯科医院の周囲をぶらついている。叶いそうもない愛だが、キョーコさんは本気のようだった。同じ地域の学校にいても発展しなかった恋。歯医者の待合室しか接点の無い恋。破綻するのは目に見えているが、青春真っ只中のキョーコさんは、猪突猛進、原野を切り開いていった開拓民のように、真っ直ぐ突き進んで行ったのである。

>手 は とても  つめ た く つ ら か っ た  .北 陸銀行 の  所で も  , ま っ て み た .

手袋もせずに、吐く白い息で指先を温める。いや、真冬の大雪のこと、手袋をしても顔を歪めるぐらいに、冷たかった。それでも、北陸銀行の所まで行った理由は、一つしかない。菅野時治を、ひと目、この目で見たかったのである。

>3 時 近くまで 待った.で も 見 られ な か っ た .

待つこと一時間。会話をするわけでなく、告白するでなく、ただ見たいというだけで、身も凍る中で、じっと待ち続ける、キョーコさん。もしかしたら、雪のバス停で、虚ろな目をした少女がいたなと、異様な情景を記憶している人がいるかもしれない。この日記の少女ですよ! と言っても、届かないだうろが、あぁ、あの時の、という奇跡のために、そう信じて、この連載を続けていくことにしよう。

>た だ 雪 が 私 を つめ た く す るば か りで  . . . .  .  彼 は 見 えな か っ た . 

凍えて指先は千切れんばかり。剣を喉に刺し入れるような冷気が体内をも内側からも凍てつかせる。ただ雪はキョーコさんを冷たくするばかり。時治の姿は見えないと、意気消沈する、彼女。

>彼 は 来 な か っ た .私 の 所 に は  ,   た だ  冷 たい 雪 が  降 る ば か り でか なしい で す 。

受付を見た限りでは、時治君が二時に来るのは間違いなかった。降り始めた雪のせいなのか。彼は姿を見せなかったのだ。悲しいですと、身も心も冷え冷えですと、独り身の辛さを言葉の端に滲ませる。

>た っ た ニ 度 で あ なた を 愛してし まい 

歯医者に行くついでに時治、時治、と言っているものだろうと思っていた。学校が始まれば、話題は宮脇君らに戻るだろうと。しかし、この様子だと、本気で菅野時治君を愛してしまったようなのである。



19b
 片思 い で す . 何故*で す 。  見 るだ け の 愛 しか 私
 には  あたえ ら れな い ので す か  。  貴方 のこ と は
 何 も しらす  .   た だ  見て い る だ け .. .    いえ! 見る
 ことだ っ て  あるか ど うか  わか りません   。  今 日だ って
 ただ貴方の 来る の を 待 っ て  つめた い 雪 の 降 る
 中を 一人 で  待 ち つづ け た  。  それな の に 会
 うこ と も 顔 . 姿さえ 見ること も 出来 なか っ た。
 貴方を 好 き にな っ て しま っ た 以 上 もう  ど う し ょ う
 もありません。  歯 医者 へ 行っ て . ”貴方 の名前が
 あった .. .. .  ”   としか言 えま せ ん . それ以上
 私は 何も出来な い ので す  、   分りません ・ 泣 きた
 いく ら い  ,  涙が 出そう な く ら い  か なしい で す .
 貴方 に 好 き な人 が  いたら . . .  恋人 が い た ら
 私 は  その 時 は  ショ ッ ク を  受 ける だ ろう け ど  忘れ
 ようと するか も しれません  ・  貴方 に 恋人が い な
 いよう に  ねが っ てい ます 。  貴方 が  好 きだ か ら。
 バカ な 女 だと 笑 っ て くだ さい  ..  でも  これ
 だ け は 忘 れ な い で くだ さ い 。  私 は こんなに
 も貴方を愛 して い る のだと  . . . . . .  貴方 を  ・ ・ ・・ ・

素性も知らず、見た目はヤンキーだがどこか温かみのある時治君に夢中な、キョーコさん。

>た だ  見て い る だ け .. .    いえ! 見ることだ っ て  あるか ど うか  わか りません   。

自分しか読まない日記。このような一人芝居を演じているような文章を、いったいどういった顔、心境で書いているのか、のぞいてみたくなるのは、僕だけではないはず。数十年後に読み返せば、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい文章、闇に葬り去りたいと、自ら捨てるには抵抗があるが、置いたまま自然に還ってくれればとなるのも、他の廃墟のケースでも同様に可能性のありそうな話かもしれない。

> 今 日だ ってただ貴方の 来る の を 待 っ て  つめた い 雪 の 降 る中を 一人 で  待 ち つづ け た。

彼の乗車しているバスの到着を雪の中、ただひたすら待ち続けた、彼女。来たとしても、遠目から見続けるだけ。受験日が迫った受験生が今やることじゃない。こういった行動からも、徐々に、運命のレールが廃屋の方へと向かっているような気がしてならない。さっさと家に帰って勉強しないと、数十年後には、あなたの部屋、底が抜けてますよ、と。

>貴方を 好 き にな っ て しま っ た 以 上 もう  ど う し ょ うもありません。

未来展望など全く考えていない。刹那の愛に燃える、少女。

> 泣 きたいく ら い  ,  涙が 出そう な く ら い  か なしい で す .

告白するほどの度胸は無し。手紙さえもはばかられる。想いは募る一方なのに、いつも遠くから見ているだけ。これがこの先も続くようであれば、鬱病になりかねないだろう。高校に進学をして、新しい環境で自分を変えるしかない。人生の岐路に立たされているといっても決して大袈裟ではない、キョーコさん。中卒で就職をしても環境は変わるかもしれないが、挫折感から、一生負い目を抱えて生きてゆくことになりそうで、残りの日記には、恨みつらみが、隙間なくギッシリと書き込まれているなんてことも、覚悟しなくてはならないのか。

>貴方 に 恋人が い ないよう に  ねが っ てい ます 。  貴方 が  好 きだ か ら。

金山君の時にも佳子さんに対しては消極的になっていた。邪魔をせずに、後ろからお似合いの二人を見ていようと。また、同じ轍を踏んでしまうというのだろうか。

>バカ な 女 だと 笑 っ て くだ さい  ..

書いた本人は大真面目なのだろうけど、これほど清々しいまでのピンポイントの黒歴史はそうない。

>私 は こんなにも貴方を愛 して い る のだと  . . . . . .  貴方 を  ・ ・ ・・ ・

短い人生、恥じらいもなくこんなセリフを吐ける時期があってもいい。振り返ってみれば、一番輝いていた頃、それが今なのだろう   



19c
 グ リ ー ス 見 たい ,    忘 れ ら れ な い  ・  も う*
 見たくて  たま らな い ネェ ,   グ リ ー ス 見 た い ,
 今日 、 サ ス ペ リ ア   2  を 見 て 来 た  。
 もの すご く   きも ち 悪 か っ た  ・   ,も ど し  ソ !
 血 ば っ か り 見て さ ! き も ち 悪 い !
 初め は  人 が  は もの で  人 を さ し て い る 所 の か げ
 が  うつ るのか ら 始 まるのよ。  そして  子供 の 足 が  見 えて
 そこ に  血の つい た  はも の が  子供の 足の そ ば に
 なげ ら れ る  。    そし て  場 面 が 変わ っ て .   テ レ パ シー
 が ある とい う  女の 人  の  公 演会 み た い なの が あっ て
 そ こ で   テ レパ シーの あ る 女 性 が  人 ご ろ し の
 さっ き を か んじ とっ て  テ レパ シー の  ある 女性 は
  だ れ だ か  分 っ たけ ど  あ と で  紙に す べ て 書 い て
 わた す わ ,   と言 って  自分 の 部屋 に 行き  ・  さつ 人 者は
 せ い 人病 的  人 で   _  子供 的 が んじ ょ うで  あ っ た .
  その さつ人者が   そ の 女性を こ ろ し た  ,   頭 をな ぐ り つけ
  ガ ラス の  われ 目 に *女性 の く び が  さ さ っ た  _
 その  すが たを  ・  一 人 の 男 が  そこら ら  見 て  , 二階の
  その 部 屋に  行 っ て見たけど  ・ そ の 者 は  にげ て  しまって

映画「グリース」にいたく心を動かされ、再度の観賞を強く望んでいる、キョーコさん。キリキーことケニッキーがそんなにもお気に入りなのか、ケニッキーの向こうに時治君を見ているのか。時治君を無意識に感じていながらそれに気づかずに、リーゼント頭のキャストが勢揃いの映画にのめり込んでいるといったところだろうか。

>今日 、 サ ス ペ リ ア   2  を 見 て 来 た  。

そこまでグリースと言うなら、ましてや、お金はお年玉がまだ余っているなら、二度目のグリースに行けばいいのにと思っていると、今日行った映画というのは「サスペリア2」であった。

「サスペリア2」はイタリアのヒッチコックと呼ばれる、「ダリオ・アルジェント」監督による、サイコホラー映画。エクソシストの大ヒットにより、オカルトホラー映画需要が高まったことから、サスペリアをオカルト映画のように配給会社は売り出したが「サスペリア」はミイラみたいなのが起き上がるシーンを除けば、ブードゥー教らしきものを扱った超常現象はほぼ無しの現実を踏まえたホラー映画である。そのパート2だが、製作されたのはサスペリアの前。「サスペリア」の大ヒットを受けて日本の配給会社が内容に全く関連性の無いアルジェント監督の別の作品を「サスペリア2」として公開した。

>もの すご く   きも ち 悪 か っ た  ・   ,も ど し  ソ !

嘔吐をしかねないことを言っているものの、サスペリア2のどこがキョーコさんの琴線に触れたのか、ビックリマークが興奮冷めやらなさ物語っている。人にこの映画の素晴らしさを伝えたい。でも聞いてくれる友達がいないから、気の済むまで日記に書いてやろうと。

>血 ば っ か り 見て さ ! き も ち 悪 い !

エクソシストとサスペリアの大ヒットによって、日本は残虐描写の強いホラー映画ブームに突入していった。キョーコさんもその波にのまれていた一人だろう。気持ち悪い!と言いながら、そういった刺激を欲しているのがありありと窺われる。

>初め は  人 が  は もの で  人 を さ し て い る 所 の か げが  うつ るのか ら 始 まるのよ。

近所のおばさんの立ち話、SNS、人に自分の経験を話したいという承認欲求は昔から変わらない。しかし、キョーコさんの場合は、自分しか読まない日記。何が彼女を、サスペリア2のどこがそれほどまでに、キョーコさんを舞い上がらせたのか、今となっては誰にもわからない。

>さつ 人 者はせ い 人病 的  人 で

興奮のあまりに、殺人者は成人病的と、ペンを滑らす、彼女。

当時、これほどの長文を用いて「サスペリア2」を持ち上げた、女子中学生が他にいただろうか。正確な記録が残っていないので、なんとも言えないが、少なくとも、北海道ではキョーコさんぐらいのものであったのではないだろうか   



19d
  いた 。  その 男性 は  . 友人 と 話 を し てい る 時だった(カ ルロ)
  で も  カ ル ロ は  さ けを の ん で ベ ロ ベ ロ だ った
   男性は  さ つ じ ん 者 を   さ が しも と め た 、
     そ の あ い だ  に  次 次 と 人 が  こ ろ さ れ た 。
    (その人 に か んけ い す る 人 ,  か お を 見 た人   、
        自分を 知 ら れ た 人  な ど   ・・・  )
      その  さ つ じ ん 者 は 、  人 を こ ろ す と き  .  か な ら ず
     子供の 家  と い う 音 楽 を なが し た 、  初 めの カ ゲ の
     時 も その 音楽 が  流れ て い た  、  こ ろ しの 中 で
     一ば ん ひ ど い の が   あた まをな ぐ り  つ け て
     あ つ い  湯の 中 に  顔  を つっこ ん で .  そ の 人は 女 性 で
     顔が あか く たた れ  水 ぶ くれ が  い っ ぱ い . き も
     ちわ る ! そして  男 は  子供 の 家  の  写 真 を同 じ
     家を 見 つ け た  _  そ こ に は   も と の  か べ の 上 に な にか
     コ ンク リ ー ト を つ け て あっ た  .  そ れ を  は が す と .
     子供が 人 を こ ろ し て い る 所 だ  っ た  、     そ の 絵 は 学校 に も
     あ っ たと い う こ と で 男 はさ が し た そ し て , あ っ た .
     それ は    友達 の カ ルロ の  か い た 絵 だ っ た
      カルロは ・ そ の 学 校 に 来て い て  男を こ ろ そ う と し た

キョーコさんのペンの暴走は止まらない。「サスペリア2」の魅力を洗いざらい、喋り尽くしてくれる。

>こ ろ しの 中 で  一ば ん ひ ど い の が   あた まをな ぐ り  つ け て あ つ い  湯の 中 に  顔  を つっこ ん で .  そ の 人は 女 性 で 顔が あか く たた れ  水 ぶ くれ が  い っ ぱ い . き も ちわる! 

今まで刺激されたことのなかった感覚器官を刺激されて、興奮の度合いを高める、キョーコさん。最高潮に達したのが、この下りであるのだろう。ホラー映画好きになるきっかけとは、大抵こんな風である。

カルロの運命は如何に。キョーコさんは深夜にたった一人、大草原の中に消え入りそうに立ちすくむ、あの木造家屋の二階の屋根裏部屋で、「サスペリア2」の魅力を漏らさず余すところなく解説してくれるのであった   



19e
 BUt け いさ つ が 来 てた ので  カルロ は に げ  た .
 まど を 飛び お りた 時  大 き な ダ ン プ の ひ もに
 か ら ま っ て  カ ル ロ は  車 に ひきず ら れ た ま ま ・ 道 を
 は し り ・ 道をまが っ た と き  .  あ た まを う っ て _
  車が とま り  .   他 の 車 が 来 て カ ル ロ の 頭を .. . ..
 男 は  ど う し て も  つ じ つ ま が  あわ な い こと が
 あった  ・  は じ め の 女性 が こ ろ さ れ た 時  カ ル ロ は
 自分 の よ こ に い た か ら だ 。 . 男 は  は じ めの 家 に 行 っ た
し女性が  こ ろ さ れた 所 に  、  彼は 前 か ら  ろう か の
 と こ ろ にあ る  絵の う ち  何 か が  た り な く か ん じ た
 そ し て  カ ガ ミ を 見 て .  カ ガ ミ に う つっ た  顔 が た り なか
  っ たのだ と か ん じ た  . そ し て  その  顔 は  - - -  -  カ ル ロ の
 母 だ っ た  ・   カ ルロ は 母 を か ば っ て い たの だ  ,
 昔  カル ロ が  子供 の こ ろ .  母は 自 分 の * お っ と を
 子 供の 見の前 で  こ ろ し た ・  そ し て  カ ル の 足 も と
 に は もの はな げ ら れ  カ ルロ は そ れ を  ひ ろ い  みあげ
 た 。  そ れが  カ ルロ が  昔 か い た 絵  . あの 絵 の
 げ ん 場 だ っ た ・  母 は 昔 女ゆ う だ  っ た が  夫に  反対
 さ れて 女 ゆ う を やめ さ せ ら れて  

キョーコさんは、冒頭のシーンの”絵”と思われたものが、実は鏡に映ったカルロの母であったというトリックを、説明したくてしょうがない。

あぁ、サスペンス映画のトリックって、なんて面白いのかしら。皆に聞かせてあげたい。皆に分けてあげたい。この楽しさを自分だけに溜め込んでおくのは勿体無い。今日みてきた映画の素晴らしさを伝えてあげなければ   

初めておもちゃに触れた赤子のように、彼女は増々勢いづいて、増水時の滝のように、ストーリーの真相を口元からブクブクと溢れさせてゆくのであった。



19f
                                                              その せ い か  頭が *

 * いじ ょう に なっ て しま っ たの だ っ た  . _ エレ ベ ー タ ー
  の中で  男を ころ そ う と し た とき .  その 母の ぺ ン ダン
 ト. が  .  外の  と こ ろ に ひ っ か か っ て  エレベ ー ター をう ご か  `
 した 時  くさ り が 上 に  ひ っぱ ら れ て  女は  く び     を
   しめ ら れ  て   くび に めり  こ み  血が 出  て  口 か ら
  へ ん な  き も ち わ る い  えきが 出 で  .  くさ  り は 首 を  、..  .
   と こ れで  終っ た .  とにか く  血 だ ら けで
  ぐあ い が  悪 か っ た ・  グ  リ    ス  見た い  ,
 グ リー スは  とにか く たの しい し  キ リ キ    * を 好き に
   な っ たか ら 、  何 と い う か   良 い か  んじ   !
   ぜった い  もう     度 グ リ  ス 見 る ぞ   !
    明日 は 学 校 で す ・  明 日 か ら  3学 期 ガ ンバ リ
     ま しょ う ,  大好 き   菅 野 時 治君 .  お やすみ。♡

 1 97 9 . 1   ・ 20    ( 2 1 日)  0:1 5  、

 今 日 , 始業 式が あり ま し た。 初日 か ら
  除 雪 ,    三学期 で す .  ガ ン バ リ ま しょ う   ,
 グ リ   ス 見 たい _    グ リ    ス 見 る う      !  お やす み  ,

キョーコさんをここまで虜にした「サスペリア2」という映画はなんだったのか。

総論としてキョーコさんは、

「とにかく血だらけで具合が悪かった」

という、身も蓋もない感想を残したようであった。

>グ  リ    ス  見た い

だったら、サスペリア2に行かずに、グリースをまた見ればよかっただろうが、と思うが、ワンクッション置いてから行くつもりなのだろう。結果として、十五年生きて来て一番の映画に巡り逢うことが出来た、キョーコさん。

>ぜった い  もう     度 グ リ  ス 見 る ぞ   !

惚れ込んだ映画「グリース」。もしかしたら、ケニッキーの横顔に時治君を見ているのかもしれない。受験勉強そこのけで、キョーコさんはグリースをもう一度見に行く予定を立てているようなのであった。

>今 日 , 始業 式が あり ま し た。 初日 か ら 除 雪

運命の新学期が始まった。

今日は始業式。

学校の初日早々に除雪をさせられたキョーコさんの胸に去来したものとは、一体、何であったのであろうか   



 まさかと思うが、振り返ってみれば、レディースへの萌芽でもあったということになるのか、スカートの丈を2.5cmも伸ばしてみた、キョーコさん。ドラマの悪影響に違いないだろう。

 汽車に乗ると、そこにいたのは、佳子ちゃん。その影には勿論、パートナーであるあの人もいた。つい数ヶ月前までは、来る日も来る日も、胸を焦がしつづけた、あの人が・・・・・・。

 キョーコさんは驚くことに、その彼に向かって、以前なら硬直して目も合わせられなかったその彼に対して、自分でも驚くことをやってのけた。

「こんにちは!」   

 一体、キョーコさんに、どのような心境の変化が訪れたというのか。




つづく…

「こんにちは!と、言えた少女」廃屋に残された少女の日記'79.09

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