廃墟アパート
 痛みが激しく装甲が脆弱になっていそうなことから各部屋に入れそうなので目をつけてみた今回の物件。

 ここについて書かれたものを二三目を通してみたがどれも十年前ぐらいのもので現状を反映しているとは言いにくそうだ。殊に当時でさえ少なく見えた残留物などはほとんど近所の子供らに持ち去られてしまっていてもうそう多くは残ってはいないのではないか。十数年の歳月が流れていればそれも仕方のないことだろう。

 でも、僕がブログ開設当初から掲げている揺るぎないコンセプト「大都会、こんなところにポツンと廃墟」にハマり過ぎるぐらいハマっている物件であることには疑う余地のないところである。

 大東京のど真ん中に居を構えていながら、なぜに自らの時の針を進めることを拒み、現状を維持するどころか、朽ち果てるままに身を任せてしまっているのか。

 アベノミクス不況、不正雇用統計問題、稼ぎは食っていくのが精一杯なのにヘタに資産を持っているために生活保護を受給出来ない等、都会の一等地に遺跡のような建物を持て余し気味にしておくにはそれ相応の理由があるのだろう。

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 某民放番組より遥かに先駆けて、嘘だろ!?大都会の超一等地のこんな場所に半世紀以上も時間が静止したような今にも自然崩壊をしそうな廃墟があるのですかと、ほうぼうより驚嘆の声を浴びることになった過去の一連のヒット記事を読んでもらえば、僕がいかに時代を先んじていたことがわかってもらえると思う。あの番組は僕の逆を突いただけなのである。

 ”あの”某民放番組というのは、もうお気づきの方もいらっしゃるかもしれないが、所ジョージが司会をしている「ポツンと一軒家」のことである。ここ最近は裏番組の「イッテQ」の視聴率を越すことも珍しくないまでの人気番組になっているそうだ。

 正直、キナバル山のある「カリマンタン島」、世界最長の経路で北京からモスクワまでのシベリア鉄道に乗車、南米大陸最南端の「ウシュアイア」、西チベット高原のど真ん中の「カイラス山」、北朝鮮の平壌には北京から鉄道、などに行ってきた僕からすると、たかだか日本の山あいなどにある一軒家など、ポツンとには全然感じられない。この程度で珍しがって陸の孤島に住むかのように煽って紹介しているのかと。

 一回だけ放送をみたが、近くにお寺に行く山道があることを伏せておきながら番組が進行し、最後にポツンと一軒家がある理由はそういうこと(山道の管理)なのですと明かして、めでたしめでたしのようなミスリードを誘う演出で番組は終わっていた。はじめから山道の管理の説明をしていれば、側を人が通るのだから、これはポツンとじゃないだろうと思って誰もみないだろう。頭のおかしい酔狂な人が人里離れた場所に暮らすのを視聴者はみたいわけで、まぁ、この程度なら、僕の「大都会、こんなところにポツンと廃墟」の方がガチリアルだし楽しめるかと思う。

 大体、いきなり行って山奥に住む人が取材させてくれるわけもなく、ヤラセでしょう。事前にリサーチをしてロケハンをしているに決っている。

 大都会の雑踏に取り残された廃墟で藻掻く世捨て人に寄り添いたい。騒音にかき消される彼らの小さな声を拾って世に届けたい。なぜ彼らはその選択をしたのか。しっかりと二本足でここに立っていますよと。

 今回の物件でも、世捨て人と遭遇し、なんとも喉元から胃液が染み出してきそうな、酸鼻と憫然さの残る胸打ち揉まれるような大都会の病巣のごとき一室と対面することとなったのである   



廃墟アパート-34
 場所は練馬区。僕は吉祥寺駅からバスで行ったが、最寄りの鉄道駅は西武新宿線の「武蔵関駅」になる。

 至近距離に二つの廃物件がある。

 まずは黒川紀章がデザインしたようなキュービックな、映画「ヘルレイザー」のルマルシャンの箱みたいなアパート。



廃墟アパート-35
 向かいの比較的新しいアパートも廃墟だと思われる。右のは募集をすれば入居者がいそうなものなのに、オーナーはどうかしてしまわれたのか。



廃墟アパート-36
 一度はガムテで封印したドア。

 ところが訳あって前面に貼られていたガムテを剥がすことになった。紙のガムテだったので粘着跡が残りまくる。これは汚いと、テープ剥がしのスプレーをドアに吹き付けたが、結果、ドアの塗装面が溶けてしまい汚く爛れてしまったと。

 鍵はしっかりと施錠されていた。



廃墟アパート-37
 一階は何もなさそうなので二階へ。

 このアパートの前に公園があるので小学生の声がよく響く。



廃墟アパート-39
 廃墟での自然の恵み、蘚苔。

 癒やされます。



廃墟アパート-38
 二階も全て鍵が閉まっていた。

 ポストの口もガムテを剥がしたものだから容赦なくチラシを投函されている。

 オーナーの目的意図は不明。



廃墟アパート-40
 オーナーは「ジュン」さんでしょう。

 ジュンさん、ポストのガムテだけは貼っておいた方がいいですよ!



廃墟アパート-6
 メインの物件の方へ。

 二棟続きで横に並ぶ廃墟アパート。

 打ち破られたガラスに垂れ下がる鉄柵。

 グシャリとなっているのは元駐輪場の屋根だろうか。

 駐車場の入り口だったであろう敷地の縁の斜めになった角のところの縁石部分ギリギリにて、立礼を一分ほど行う。

 許されるものではない(探索が)が、せめてもの誠実さを示す儀礼的なものである。

 僕は背筋を真っ直ぐにして春の陽気に誘われるようにたおやかに敷居を跨いだ    
 



つづく…

「暗澹たる部屋」世捨て人をかくまう、廃墟アパート.2

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