廃ガソリンスタンド-563
 東京からバイクでひた走り峠を越える。少しの休憩を挟みとある湖へ。そこである用事をこなす。

 湖畔にあったのは、誰もがまだ見ぬある組織の廃墟施設だったが、僕が踏み入れるまで、およそ二十数年間は沈黙のままに時を刻んでいたであろう建物。コンクリート製だったため、内部の荒廃は微塵も感じられず、僕の感性の中で”廃墟”として区分けされるものとは大部イメージが違って見えたのだ。

 もう数年、温めておこう、誰もいない館内で、そう、独り言を呟くと、ピロティのある”ル・コルビュジエ”のサヴォア邸風施設に別れを告げた。

 この湖に来た者なら、いくつかの有名廃墟物件を訪れた後、まだ時間に余裕のある場合、ちょっと足を伸ばそうと、町の廃墟ガソリンスタンドに訪問してみようという人も少なくないはず。勿論、そういう趣味の人と仮定しての話だが。

 この廃墟GSに来て、白ペンキで塗られた事務所建物の内部をガラス越しに眺め、敷地内に打ち捨てられたBMWを興味深げに鑑賞して普通は終わるのだろうけど、今回、コンクリートに転がるネジ一本見逃さずに夢中で緻密な検証活動を行っていたところ、気づくと僕は、数十年は封印されていた口を知らぬ間に過ぎていたようで、あれ、さっきまでの錆びたBMWは何処よ? これ、聞いたこともない国産らしいメーカー(実際は知っていた)の車じゃないの? でっ、気にはなっていた円筒形のモダンな建物、玄関がここにあるということは、ガソリンスタンドの背後に自宅があったのね、と、探索者の心の奥襞をブルブルと震え上げさせるような物件と、この度、相交えることとなったのである   



廃ガソリンスタンド-562
 街中、向かい正面は営業中のお店ということもあり、ガラスは割られることなく、鍵もしっかりと閉められている。



廃ガソリンスタンド-544
メーターセールス

 今ではあたりまえのことが書いてある。その前は目分量か量り売りで売っていたのでしょうか。

 その時代感や退色具合から、三十年間はそのままであると見積もった、僕。



廃ガソリンスタンド-553
 噂のBMWとご対面。

 この時、背後の家には目が行かなかった。真新しく見えて、ガソリンスタンドとは関係の無い人が住まわれていると勝手に思っていた。



廃ガソリンスタンド-559
 ガソリンスタンドの御主人の愛車とみて間違いない。

 当時は儲かっていたようです。



廃ガソリンスタンド-552
 盗難されたのか、所々部品が外されている。



廃ガソリンスタンド-555
 長期放置車の目安にもなる「高価買取」の広告。



廃ガソリンスタンド-556
 御主人の、ささやかな知恵、僕だけが汲み取ってあげられた。



廃ガソリンスタンド-558
 当時なら山梨県民の誰もが振り返った、ホワイトのBMW。浮き出た錆が瘡蓋と流れる血の如く、車体を覆い尽くし、後方の金属壁まで侵食して廃墟の闇を拡大させていた。



廃ガソリンスタンド-549
 不法投棄のエンジンか。



廃ガソリンスタンド-551
 BMW製のエンジン。

 つまり、盗み出そうとしてここまでやったものの諦めたか、御主人が修理目的で取り出したまではいいが、そのままになっているのか。



廃ガソリンスタンド-546
 業務用の軽トラも。

 木材でジャッキアップしてある。



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 出光のガソリンスタンドだった。



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 廃油の臭いでフラつきそうになり、何回も目をしばたたかせる。



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 視界がハッキリすると、僕は事務所の裏に言葉も無く立っていた。

 振り向くと、



廃ガソリンスタンド-410
 僕が来るまで、数十年間は眠っていただろう、国産のビンテージカーと、廃屋が口を開けて、ようこそと、待ち構えていたのである   




つづく…

「バーンファウンドしてしまった、探索者」廃墟、カーマニアの御主人.2

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