廃工場-170
 建物の入り口から入ってすぐ、事務所区画にあった机のサイドには小さな引き出しの棚が顔を揃えてズラリと並ぶ。未使用の文房具などがたくさん詰め込まれていた。

 身支度をして去っていった、とは思われないような、時間の流れが突如振り下ろされた斧で断ち切られたような、唐突感を感じるのは、僕だけではないだろう。

 真後ろへ振り返る。つまり、入り口の方。入り口横の壁。



廃工場
 くすんだホワイトボードには、マジックで書かれた関係各所の電話番号。

 田舎町の零細企業とはいえ、会社としての組織が活動するにあたり、この程度の関係者と緊密に電話連絡することは別段不思議でもないことである。

 この関わり合いの中から、ある日突然姿を消したお得意先があったとして、はて、どうしたものかなと、現地に赴いたりしないものなのだろうか。

 理由を知っているからこそ、来るに来られなく、この場所がそのままになっている理由であるのか、また別の何かがあるのか、入って早々に、地の底からのうめき声のような問いかけを目の前に突き出されたようで、背筋がシャキッと天に向かって垂直となり、襟を正し、疑惑解明に全力を尽くすことを熱く心に誓おうとする、初物の未踏破であるからこそ未知数の獲物にゾクゾクと込み上げてくる武者震いに官能的なものさえ感じてしまっている探索者冥利にこめかみの激しい震えが止まらないでいる、僕   



廃工場-2
 右の山側の作業場のような場所へ移動。

 積年の結果としてのごみで埋め尽くされた床。



廃工場-3
 語りかける、冷蔵庫。

 何も僕は、ただの暇潰しで各廃墟にて冷蔵庫を冷やかし半分でのぞいているわけではない。答えを導き出すための地道な検証作業としての積み重ねの一環なのである。

 唐突感、残っていましたよ。



廃工場-5
 窓際に並行して設えられている作業机に沿って奥へ進んで行くと途中にはマッサージチェアが。古い銭湯にあるような、今風のガンダムやエヴァンゲリオンの操縦席みたいなのではなく、応接間の椅子みたいなやつ。

 社長や職人達の当時の空気感を掴もうとマッサージチェアに座ってみるが、揉み出しアーム部が後頭部を押しっぱなしにするので、首が前へ傾いたままになり、長く座っていると頚部痛になりかねないので、程よい頃合いで切り上げる。何事も、深追いは禁物なのだ。



廃工場-8
 田舎の山の中にある撚糸工場に、一体、何人の職人が働いていたのだろうか。



廃工場-7
自分本位で物事を考えると
人の意見など聞く耳を持たない


 廃墟に実に多い、格言カレンダー。

 そこには、皮肉しか残されていない。



廃工場-11
今日という日は二度とない
明日に向かって有意義に過ごそう


 有意義に過ごした結果がこれであるとしたら、彼らは誰の言葉を信じれば良かったのか。



廃工場-6
 温度管理には細心の注意を払っていた、職人達。



廃工場-9
 血の飛沫かと思い一瞬目を見開いて立ち尽くしたが、この工場の作業内容にさもありそうなものなので、動悸が激しくなるまでには至らなかった。



廃工場-10
 とはいえ、薄暗い廃墟工場でいい大人の男がたったひとり、少しでもこんなものに驚いてしまったことが恥ずかしくもあった。



廃工場-14
勝負ビキニだ!

 仲根かすみさん、今では武豊さんの妻として・・・と書こうとしたら、武豊の嫁は佐野量子だった。仲根かすみさんはソフトバンクホークスの和田毅とご結婚されています。

 同じ似たようなB級グラビアアイドルの二人。アイドルの活動としてはぱっとしなかったものの、良い旦那さんをもらったのではないでしょうか。



廃工場-15
 売れそうな電動工具も置かれたまま。今だったらヤフオクで売れるかもしれないが、ネットオークションが普及する前に一家はここを去ったのだろう。



廃工場-12
 刺繍のようなデザインの缶。クッキーやお菓子の詰め合わせなどが入っていた缶だろう。

 開けてみることに   



廃工場-13
 期待はしていなかったが、ただの端切れ。

 塗料の汚れを拭くためのウェスだったのかもしれない。

 ある程度車やバイクを自分で弄る僕は、Tシャツなどをそのまま捨てずに、具合の良いサイズに切り取って、このようにウェスとして再活用している。たった一枚のTシャツから、おもいもがけないぐらいのウェスが生み出され、お金を出して雑巾などを買うのがバカらしくなるので、皆さんもやってみてはいかがでしょうか。Tシャツを再利用して惨めったらしい、という羞耻心に打ち勝つ人ことの出来る人であるということが、前提ですあるけれど。

 背中に突起物が食い込んだので、何だと思い、そっちに振り向く   



廃工場-17
 まるで、昨日今日脱ぎ捨てられていったような、人肌のぬくもりさえありそうな、社長夫人のであろう下着が、開かれたままのタンスの引き出しの角にのせられたままにあった。

 一家で夜逃げの月明かりの夜、衣服だけでも洗濯をしたものにと、夫人が、この期に及んでまで、夫にせかされながら、女性らしく、下着を着替えていった刹那がそのまま残された結果ではないのだろうか。

 また僕は、このような場、突如生活の場を追われた一家の慌ただしさが漂う残影と遭遇してしまったのかと、言いようのない寂寥感に包まれ、しばし無言でもはや布でしかない御夫人の下着に潜んでいるであろう人間模様に思いを巡らしていた   

 窓側の作業場スペースを見終え、風呂場やトイレなどを見た後、僕は、とある場所にて、滝のように流れ落ちてくる、写真アルバムや写真の束、一家の謎に迫ることが出来るような物証を、、、
 


廃工場-105
 発見してしまう運びになる   




つづく…


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