ローヤル-86
 最強のセキュリティーシステムを誇ると言われている、このラブホテル「ローヤル」。数々の困難を経て、ようやく最上階まで到達するに至った。

 思えば、枠に囚われて身動き出来ずに、まるで、一枚の絵画のように空中に留まったまま、首の激痛とともに時間だけが経過してゆき、あられもない痴態を晒したまま、後続の探索者に見られでもしたら、どう取り繕って良いのやら、それだけならまだしも、制服の人にその姿で詰問されたら、どんな言い訳をすれば、納得して逃してくれるのだろうかと、思索に思索を重ねるほど、額に玉の汗が溢れて、やがて頬に伝って顎に溜まり、そこから大粒の巨峰みたいなのがボタボタと床に落ち、ローヤルの乾いたコンクリートの上に徐々に染み込んでいった。
 
 ここまで館内に轟音が鳴り響くことはなく、深い安堵の溜息をつく、僕。

 全身発汗をしてその気化熱で体が冷やされ、人熱感知から逃れることが出来ていたというのか。

 本当の謎を、この時の僕はまだ知る由も無かったのである    



ローヤル-87
 ラブホテルの最上階に、高級中華料理店の組み合わせ。

 日本広しといえども、そんなのここ「ローヤル」だけだっただろう。

 頭上の柔らかなアーチが、一戦を交えたカップルらの火照って冷めやらぬ体を毎夜受け入れていたのか   



ローヤル-88
 難攻不落のセキュリティー・システムを突破し、最上階まで達してご満悦の侵入者達。

 防火扉を開いたままにするために、まず冷蔵庫を引っ張ってきて、横倒しにして、扉ドメとして活用。

 ここまで来たのだから祝杯を上げようと、ワイングラスを二つ持ってきて、転がっていた養命酒のボトルも一緒に、なみなみと注いだ。

 両者ワイングラスを持つと、手をお互いにクロスハンドさせて、自分のグラスを相手の口へそれぞれ持って行く。

「乾杯、ホテルローヤル!」

「チアーズ!ローヤル!」

 そんな宴の跡が、確かに、二つの円としてありありとここに残されているのを僕は決して見逃すことは無かった    



ローヤル-89
 規則性も無く、雑然と積み上げられている不用品の数々。



ローヤル-103
 リスでも飼っていたのだろうか。

 まさか、骨でもあるのではと思いカゴを揺すってみるが、もぬけの殻であった。



ローヤル-113
 まぁ、残す程の物ではないガラクタの山。



ローヤル-111
 光る波濤を切り裂いて優雅に進むスワン観光船。

 向こうから見たらローヤルは絶好の興味の対象に違いない。船長兼ガイドも「相模湖を不気味に見下ろすあの巨大なラブホテル、実は廃墟なんですよ。夜には不慮の事故を遂げたカップルの影が窓に映るとか映らないとか・・・」なんていう説明をして、乗客の視線をこちらに誘導しかねず、その際、バッチリ見られてはたまらないので、物陰にこそこそと隠れながら卑屈に探索を続ける、僕。



ローヤル-118
 対岸のあれも以前は廃墟だった。現在は所々にテナントが新しく入っている。直接行ってみたが、廃墟ではなくてがっかりして引き返して来た。



ローヤル-109
 ラブホテル内であることを忘れるが、唯一らしいのがこのミラー円柱か。



ローヤル-129
 右に進むとカウンター。その奥が厨房になっている。



ローヤル-134



ローヤル-104
 お金のかかっていそうな、個性的なシャンデリア。

 今、全てが無駄に。



ローヤル-112



ローヤル-119
 ただ散らかっているだけでも、ボカすと幻想的に見えないこともない。



ローヤル-122
 厨房を覗いてみようと、カウンターの方までやって来たが、



ローヤル-123
 物色されたのか、引き出しという引き出しは開けられていた。

 金属としてお金になりそうな、ナイフやフォークを盗んでいったとか。

 カウンターの上を見ると、



ローヤル-124
 侵入者による、ほんわかした洗剤アートのウサギに心も癒やされそうになるが、下手過ぎるので、心を揺さぶられる程の感動は沸き起こらない。

 この後、厨房を拝見した後、オーナーの秘蔵品だったのか、妙な卑猥なコレクションの山と対峙することになる。

 さらに階段を登り、電源室経て、屋上へと駆け上がることになったのだ    




つづく…


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