羽幌小-0384
 羽幌炭鉱の最盛期の昭和40年頃、今では跡形もない、国鉄の羽幌線、羽幌炭礦鉄道築別線、上羽幌線が通る羽幌駅の駅前には、居酒屋、パチンコ店、病院、映画館、50mプールまでもが軒を連ね、大変な賑わいを見せていたという。

 現在、そんな喧騒はどこへやら。羽幌の町を歩いても人影はなく、息を押し殺したような静けさが漂うのみ。たまにいる歩行者は大抵がご老人。僕を町の人だと思ったのか「こんにちは」なんて声をかけられ、予期せぬ突然のことなので、しどろもどろしてしまい、芸のない同じ挨拶を返すのが精一杯であった。

 以前大探索を敢行した、羽幌炭鉱の高層アパート群のような僕からすれば優れた観光資産を持っているかに見えても、羽幌町のホームページを拝見してみると、天売島や焼尻島の自然を全面に押し出しており、炭鉱遺産は申し訳程度に”炭鉱マップ”のリンクが隅にこっそり貼ってあるだけのようだ。つまり、そんなに力を入れていないように思える。


 ちなみに、「幸福の黄色いハンカチ撮影マップ」なるものもあり、そこには、町中の撮影ロケスポットがコミカルな武田鉄矢の似顔絵とともに詳細に紹介されていた。その武田鉄矢の似顔絵がなぜか白髪頭で老け込んだ今の初老の姿。「あんたが大将~!」の頃のポマードでベタベタした長髪頭の目がギラギラに輝いていたとびっきりイキのいい頃の彼の姿ではなかった。そもそも「幸福の黄色いハンカチ」って夕張じゃなかったっけか。武田鉄矢以外も似顔絵で描かれているが、武田鉄矢に注力し過ぎたためか、どれも、倍賞千恵子や桃井かおりからは遠くかけ離れている。高倉健っぽいのもあるがやはり、似せる気が皆無で、わざとかな?と、肖像権が複雑に絡んでいる諸事情でもあるのかと勘ぐってしまう。だいたい武田鉄矢のイラストがやけに大書きにされていて、高倉健の存在感が殊更薄い。主人公だったのに。

 が、「幸福の黄色いハンカチ撮影マップ」と書かれた下によく読むとこう書かれていた。(2010年10月10日放送)と。

 約10年も前のものを、さも、まもなく放送ですよみたいに掲げておくことが、ろくな行事も無く、町の衰退を感じずにはいられないが、どうやら、テレビのドラマ版が、阿部寛主演であったようだ。共演の女優に、堀北真希もいる。どうりで倍賞千恵子や桃井かおりに似てないはず。かと言って堀北真希に全く寄せておらず、武田鉄矢だけ妙に忠実描写であったのは、単に作者の技量の未熟さによるものだったのだろうか。

 阿部寛に堀北真希、当時の羽幌の町は、町民全員ががロケに押し寄せるぐらいの、炭鉱往時以来の、騒ぎだったことでしょう。

 何も羽幌の町は、沈みゆく町に手をこまねいているだけではなかった。観光予算を大幅に計上し、当時のトップスターとも言える豪華俳優陣を揃えて、観光客の誘致に尽力していたのだ。

 羽幌町側からすると、あまり大々的にアピールはしていなく、ターゲットとする層からはむしろ遠ざけたいのかもしれない、がしかし、僕にとっては、これが絶対メインの、見逃せない物件が、この廃墟小学校の校舎。



門柱-0387
 羽幌町立曙小学校。

 テレビ好きの僕でさえ記憶に無かったドラマなどより、吸引力、秘めてました。



羽幌小-0386
 東京の学校と違って、ガラガラと閉じる門扉など存在しない。横から抜け放題なので、付ける意味など無いのだろう。

 小股で進んで行き、ちょうど門柱と門柱の間で立ちどまる。軽くお辞儀。二秒して頭を上げる。

 北の大地の大空の下、廃墟小学校、半径数キロ、またしても、僕ひとりだけ    



羽幌小-0390
 かつて、何百人もの児童が毎朝歩いただろう舗装もしていない校舎へと続く道。
 


羽幌小-0388
 最近見なくなった二宮金次郎像がここにはあった。

 今だったらながらスマホは厳しく注意されるが、昔のながら読みは尊敬の念を持って称えられていた。あのように、時間を惜しまず勉学に励みなさいと。



羽幌小-0389
「粒粒 卒 苦 八十年」?

 ちょっと意味がわからなかった。

※こちらは『粒粒辛苦』とのことです。通りすがり様、ご教授、どうもありがとうございました。



羽幌小-0381
 校庭のあった場所は見るも無残に荒れ果てている。

 錆びたブランコが草叢の中で朽ち果てようとしていた。



羽幌小-0392
 火災訓練以外では使われることのなかった、消火栓。

 小学生低学年の頃、学校のお昼休みの時にクラスの友達が「秘密基地に行こう」というので、『えっ、校内の中に?』と訝しみながらもついて行ってみた。連れて行かれたのは、冬だったので使用していないプール、その横の小さな空き地。写真と同じような消火栓もあった。友達は消火栓の蓋をしてある栓の突起部分に跨り、「変身~」と言いながら仮面ライダーの変身ポーズを披露。何でこの場所が秘密基地なのか意味不明であったし、そこで唐突に仮面ライダーの真似をするのも理解不能であった。早生まれで少し大人びていた僕は友達のした幼児みたいな振る舞いに苦笑いをするしかなかった。やった本人は実に誇らしげで満足げだった。あまりにも奇妙な体験だったので、腫れ物に触るように、そのことで友達をからかうこともなく、人に話しても伝わらないだろうから、今まで語ることも無かった。あれから数十年、街中で学校のプールや古めかしい消火栓を見ると、あの時の彼の秘密基地の仮面ライダー変身ポーズをいまだに鮮明に思い出す。あれは、一体、どんな意図をもってやったのかと   



羽幌小-0324
 近くで見ると校舎の損傷はかなり激しく、壁の一部は大きく抜けていた。そこよりお邪魔させてもらう。



羽幌小-0325
 出入り自由の無法地帯化されているのか。

 流しには鷹だかハヤブサの剥製が。

 本や地図、当時の黒板の落書きなど、廃校時からそのままになっているようだった    


※なお、トップの画像、校舎に小学校と高校の校章が並んでいる理由は、

この校舎は北海道羽幌太陽高校(北海道羽幌高校の太陽分校定時制1951年開校が前身)の校舎として1962年完成したものです。 

62年5月北海道羽幌太陽高校が移転。 
71年3月廃校。 
71年5月同校跡に北辰中学校が移転。 
75年3月閉校。 
75年4月入れ替わり曙小学校が移転。 
90年3月閉校。 

つるかめ74さん、どうもありがとうございました。



つづく…


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