ローヤル-125
 ラブホテルでありながら、高級中国薬膳料理レストランの店舗を最上階に構えていたという他に類のない独自路線で相模湖の湖畔においてひときわ妖艶で底知れぬ異彩を放っていたという「ローヤル」。

 廃墟となった今ではその外観はより一層深みが増し、緑も眩しい穏やかな湖畔にはピンクと白とブルーの色彩がまるで異教徒によって建てられた塔のような違和感を遠く対岸にまで伝えていた。

 体力消耗に備えて栄養を摂らなければならないと、行為を始める前にカップル達は最上階のレストランに押し寄せていたのだろうか。それとも、全てをやり終えた後だったのか。

 きっと、それらのどちらでもなかっただろう。

 性行為だけを目的に訪れていたカップルが、何が悲しくて、ともすれば後ろめたささえ抱いて忍ぶようにやり場を求めてやって来ていたというのに、似た者同士が、一堂に会して顔を揃えて食事をする理由がどこにあるのか。「うちらみたいなのがいっぱいいるね」なんて、気弱な女の子だったらいたたまれなくなり、やる前に心が萎んでしまうことだろう。行為後でも、性行為の余韻を他人と共有したいなんて思う人はそうはいない。

 オーナーと利用者の思いの掛け違いから始まったのかもしれない「ローヤル」没落の今思えば嚆矢だったのだろうか、最上階中国薬膳料理レストラン、その中心部でもある厨房に、なにかオーナーの独自性が垣間見えるものはないだろうかと(店内はごく普通だったので)、聖域に土足で踏み込むような気がしてちょっと抵抗感を感じたものの、心の中ですみませんねを繰り返しつつ、畳の上を靴下で歩くように、そろりそろりと、足を踏み入れてみることにした    



ローヤル-126
 至って普通だった。

 綺麗でもなく取り立てて汚くもなく。



ローヤル-127
 前に行った自殺者が発見されたどさん子ラーメンの厨房は黒光りしていたが、ここはそこまでではない。

 従業員が腐らず清掃をマメに行っていたということは、オーナーと従業員の意思疎通、従属関係は上手く機能していたようである。

 特に発見も無く厨房を出た。



ローヤル-116
 各種調味料の入ったキャニスターが整然と並ぶ。

 荒れた職場では、こういった列が乱雑になっていたりするものだ。従業員の乱れた心を映す鏡のようなものなのである。



ローヤル-121
 開けようと思ったが、豆などが虫に喰われている場合、蓋を開けたと同時に大量の虫が吹き出て来る可能性もあるのでやめておいた。



ローヤル-115
 開けられる扉という扉、蓋という蓋はなるべく開けていく。



ローヤル-120
 床にも特別な物は落ちていなかった。



ローヤル-130
 エレベーター近くのレジ台らしき上に設置されてた空室確認用のランプ。

 一瞬ルームサービス用かと思ったが、そんなわけはなく、おそらく客室清掃員用に違いない。



ローヤル-128
 対岸からは僕の姿が見えるはず。

 異様な存在感を放つ廃墟の塔の最上階で何やら怪しげな活動をする男。一般人はどういった視線を僕に投げかけているのだろうか    



ローヤル-96
 薬膳料理の漢方効能表。

 コピー用紙なので、従業員はこれを覚えさせられていたのかもしれない。



ローヤル-100
 神秘のベールにつつまれていたといっても過言じゃない、ローヤル中国薬膳料理レストラン「天湖」のメニューをついに入手。



ローヤル-98
 値段設定は実に大雑把。どういう相場で見たらいいのか難しいが、ラブホテルの料理で一万円超えは高いような気もする。



ローヤル-99
 長寿メニューをうたってご高齢者をターゲットにしていた様子。一品が二千円前後もする高額なメニュー欄。

 大学生のカップルが注文するわけもなく、ローヤルの迷走は当初からすでに始まっていたようだ。例え途中からラブホテルに転業した事実があったとしても、この値段設定のままは無謀すぎたのだ。



ローヤル-114
 時価なのか、季節のメニューなのか、値段表記の無いのもあった。

 更には、レストランのフロア隅で、裏と表が各種入り乱れて、大量のエロビデオコレクションの山を発見することに    




つづく…


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