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 廃墟化した「行川アイランド」の奥深い森のどこかを今もお客を求めて彷徨っているという、これが噂の廃バンガロー。

 倒木に寄りかかられ、生い茂る草に飲み込まれようかとしているこの廃バンガローの使用用途は一体、何であったのか、ちょっと想像がつかない。

 客の宿泊用なら、複数棟が残っているはず。一棟だけ残してあるというのは理解に苦しむ。

 従業員用宿泊施設?

 それだったら駐車場の総合案内所の横にでも建てた方が合理的である。



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 園内監視も兼ねての従業員宿泊施設であったとしても、見失われるような寂しい森の中にぽつんと一軒家のごとく、まるで人の目から覆い隠すように建てる意味はあるだろうか    

 もっとも、ここまで荒れてはいなかったかもしれないが。



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 ガス管とメーターが配置されている。



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 給湯施設。

 管の連結部の蛇腹みたいな部分がまさか金属の質が良くて金属ドロに狙われたのか。だとしたら、世も末だ。ここまで来て、やりますか、と言いたいところではあるが、折しも千葉県の台風被害の時には、屋根が雨漏りして困っているお年寄りの家に他所からやって来た悪質な業者と思われる男達が、適当にブルーシートを屋根にひょいとのせただけで14万円も請求したという被害者の老婆の涙ながらの報告も伝えられたので、この程度の窃盗は十分考えられるだろう。



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 草木に飲み込まれようとしているどころか、原始ジャングル化した森に取り込まれようとしていた。

 日本じゃないみたいだ。



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 中途半端な廃墟探索者、寄せつけるものかと、窓と玄関には丸太が打ち付けられている。

 ただ廃墟目的の人は、ここまで来て引き返すことはない。

 丸太に足をかけて階段のようにしてよじ登り、二階から侵入を果たすことだろう。



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 関係者の努力は、徒労に終わったようだ。

 溶射なく雨風、時に雪が吹き込む、清々しいまでのウェルカム状態の様相を呈していた。



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 半開きの下駄箱にはスリッパ。懐中電灯二本に漫画雑誌が二冊。

 大開放されてからだいぶ月日が経っている様子。



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 板張りの壁や階段には真新しさを感じる。長期に渡り砂埃が付着してくすんだような汚さはない。



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 飲みかけのコカ・コーラのペットボトルは子供用のシャンプーのボトルみたいにに縮んでいる。

 玄関の様子だと居住者は家族かとも思ったが、この感じだと、独身男性か、短期の宿泊者向けが濃厚だ。



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 ほぼ揃っている、食器に調理器具。

 なぜこんな完璧な設備が整えられている宿泊施設が、行川アイランド内のどこかの森をまるで漂流するかのごとく存在しているのか。

 海外ドラマ「ロスト」の島は実は動いていたので発見されにくいというオチだったが、僕が見逃してしまったこの廃バンガローも、そうでないと説明がつかないようなぐらいの強い存在感がある。どうやって、僕の視界から逃れることができたのか、と。



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 ごめんなさい、をしているような壁のカレンダーは、1998年の11月で時間が止まったまま。

 1988年(昭和63年)といえば、山一證券が廃業、アントニオ猪木東京ドームで引退試合、史上初の若貴兄弟横綱が誕生、ウィンドウズ98日本語版が発売、セガ「ドリームキャスト」発売、そんな激動の時代に、人知れず深い暗い森の中に葬り去られた廃バンガローが、ここ、千葉の房総半島の足の爪みたいな先っぽにあったという、知る人が極めて少ないであろう、意外なる事実    

※1988年は当然、平成10年です。大ボケしてました。たつのすけ様、どうもありがとうございました。



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 ここにはそれ以上に、驚くべき痕跡が残されていた。

 人生に絶望を感じていたのか、森の中で偶然にここに行き着き、誰もいない環境で創作活動を始めたのか。途中、精神を病んでしまわれたのか。

 著名芸術家が長期に渡ってこの廃バンガローで逗留していたようなのである    




つづく…


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