吉祥寺-20
 物言わぬ、蓄音機。



吉祥寺-39
 照らすことのない、電灯。



吉祥寺-124
 Tシャツのほつれさえ縫えない、ミシン。



吉祥寺-101
 家族の途絶えた廃屋の底で、今も尚、語り続ける、性風俗雑誌。

 言葉の持つ無尽蔵の力強さに、深く頷き、頁を掴む指先を強張らせる、僕    



吉祥寺-102
非処女はサイズ不足の不満を訴える セックス・ドクター 増田先生

 ご住職、新婚で性知識が浅かったのか、こんな記事を読み込んでいたのだろうか。ちょうど手で持つ位置に度重なる使用感からくるよれが残されていた。



吉祥寺-103
コンドームは若い娘の指で作られる 

 コンドームの製造工場にはセクシュアルな異臭が漂っているという、記者の妄想で書かれたような記事。

 週刊実話系でさえ、昔は、こんなにも回りくどいエロ記事しか許されなかったのだろうか。



吉祥寺-105
 かと思えば、自殺の名所「東尋坊」の絵葉書。

 ご住職一家、そのつもりで行ったが、崖の上で思いとどまったとか。

 帰りは気分も晴れやかに、土産に絵葉書でもと、これを買い求めた。

 詳細は語りはしないが、大まかな概要は指し示してくれるのである。



吉祥寺-1075組の夫婦が体験したヴァン・デ・ヴェルデの体位実験報告

 大真面目な実験結果だが、厳しい規制の中、こんなもので読者の性的欲求を満たそうとしていたのかと思うと、編集者の苦労が偲ばれるというもの。



吉祥寺-108
 無修正動画が氾濫している現代からすると、たわいない記事が並ぶ。それゆえ、読み手の想像力に委ねられていたと言えるだろう。当時も今も夫婦ですることは同じなのだから。



吉祥寺-109
 頁がうまく固定出来なかったので、畳の上に落ちていた霊具膳のお供え用のお椀で固定。

 薄暗い廃墟の一室で大の男がたったひとり、お供え用のお椀で大昔のエロ本の頁を固定している姿に、一体俺は何をやっているのかと、情けなくなりひりつくような乾いた笑いが喉元より込み上げてくるが、全てをお伝えするのがお前の使命ではないのかと、そう自分に諭すと、僕は止めていた手を再び動かし、無心にシャッターを押し続けることに専念したのです    



吉祥寺-127
 隙間だらけの廃屋ゆえ、一陣の風が吹き抜けていった。粉吹き芋のように火照った顔を一瞬だけクールダウンさせてくれた。



吉祥寺-110
熱海 キャバレーのあるホテル ウロコヤ

 キャバレーが併設されたホテル「ウロコヤ」だそうだ。

 とてもじゃないが、子連れでは行けない場所だろう。勿論、夫婦でも。

 神仏に仕える身の寺の住職とは思えないような煩悩満ち満ちた残留物ばかりに飽きれ言葉を失う、僕    



吉祥寺-123
 奥をさらに掘り探り進めると、一冊の青い表紙の写真アルバムが出てきた。

 重厚な表紙をめくってみると    
 

 

つづく…


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