吉祥寺-130
 陶器製らしき、潰れた饅頭みたいな物に被さるちょっと重量感のある蓋を開けてやると、こんもりと入った灰が顔を覗かせた。

 これが火鉢というもののようだ。

 時代劇でしか見たことがなく、日常の使用品として実際に部屋に置かれているのを直に見るのは初めてのことだ。

 隙間風だらけのこの家で、こんなか弱い暖房器具で底冷えのする冬を乗り切れたのだろうか。



吉祥寺-125
 通常の探索者だったら、数冊の雑誌や特徴のある襖を写真に撮って、満足顔でこの場から立ち去ることだろう。

 僕はそれだけでは気が収まらなかったのだ。

 不可解極まる、旧本堂とご自宅の現状保存。

 この住居棟など、下は細い鉄骨数本で何とか補強されて辛うじて支えられている状態であり、僕が本気で蹴りを入れれば、轟音を立てながら崩れ落ちるのではないだろうか。

 危険を承知の上で、今やテレビのセットみたいになった崩落間近の建物を残しておく、理由とは?

 本来なら、誰かしら土地所有者がいるわけだろうし。

 住職ご一家はもしかしたら、家族全員が行方不明になったままになっており、残された数少ない檀家の皆さんは、一家の帰りを今尚も信じて待ち続けているのではないかと、ふと、そんな考えが、頭をよぎったのだ。

 真実を少しでも手繰り寄せるために、どういうご一家であったのか知る手がかりは何かないものかと、通常より倍の探索時間を費やしてみることにした。

 同行者がいたなら『そこまでやるのですか、カイラスさん・・・』と、言葉を失ったまま、立ち尽くすこと以外何も出来なくなっていたかもしれないほどに、あらゆる場所に手を伸ばしてみたのだ。

 すると、今まで誰も見ることのなかった、ある一冊の写真アルバムの発掘に、成功することになった。

 そこには、海外航路で旅立たれる間際の船上の甲板で撮られたような写真など、上流階級の優雅な暮らしぶりが切り取られたような、数十年後に廃寺となるご家族とはとても思えないような写真が幾枚も残されていた    



吉祥寺-111
 探索者冥利に尽きるとは、このことだろう。



吉祥寺-164
 例えは古いが、まるでリカちゃんハウスのような、壁一面が削がれた廃屋。

 いまだ、ご一家の写真アルバムがここに隠されていると、誰が思いますか?



吉祥寺-154
 鶴の足のようなか細い鉄柱で弱々しく支えられている。

 探索者の自重で崩落する危険もあるので、くれぐれも注意が必要だ。



吉祥寺-148
 一階はどういったスペースだったのだろうか。



吉祥寺-156
 自転車に木の切れ端。古びた家具。

 物置だったのか。



吉祥寺-152
 吊るされた土瓶。

 何の意味が?



吉祥寺-151
 アメリカのお宝番組を観ていると、鉄くず同然の自転車の残骸とも言えない残骸未満の鉄の塊に、とてつもない値段がつくことがある。

 これは錆だらけとはいえ、自立している悪くないコンディション。

 でもスポーツタイプというわけではないので、安いんだろうなあ...



吉祥寺-153
 自転車の所有台数からいって、家族は少なくはなかった。



吉祥寺-134
 鉄釜に桶。

 炊事場が一階にあったのかもしれない。



吉祥寺-150
 干からびた動物の死骸。

 犬か猫?



吉祥寺-157
 食器棚。

 台所兼納屋。

 食事が出来ると二階に持っていって食べていた。



吉祥寺-158
 鉄柱が二階を支えきれなくなり、いつ天井が落ちてきて生き埋めになっても不思議ではない。

 咳さえ弱々しく咳き込むことに努める、僕。



吉祥寺-159
 歴史あるお寺の庭の片隅でよく見かける、砲弾の殻。



吉祥寺-155
 ご住職の趣味はカメラ。

 であるならば、写真アルバムに映っていた優雅な暮らしぶりも納得できるというもの。

 写真アルバムの表紙を開いて、謎に包まれたご住職一家の歴史を紐解いてみることにした    




つづく…

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