田浦-174
 カミオン少年の家のトイレ前。

 物置みたいな、耳障りな音が響き渡りそうな木製の引き戸。

 昔の喫茶店にあったような、女性用を示すプラスティック製のプレートが貼ってある。

 個人の家だったら男女兼用のはずである。使用実態もそうだったであろう。

 わざわざプレートまで掲示して区別してあるということは、家族に女性が多いので、女性専用のトイレを設けていたか、それとも、退屈な日常の中で非日常的な演出をすることにより、まるで公衆便所であるかのような、驚きと刺激を毎日感じて過ごしたかったのか。

 カミオン少年ご家族が遥か数十年前に引っ越された今、果てしなくどうでもいい疑問ではあるが、そんな疑問を抱きながら探索をすると、残留物が時としてそれらと関連付けられて重要なキーワードとなり、本来だったら解けるはずのない答えに結びつくことががままあるのだ。

 薄いプレート一枚さえ疎かにしない、僕であった       



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 トイレ頭上の隙間の棚に、『黒ひげ危機一発』ゲーム。

 賑やか幸福家族を象徴するようなゲームである。

 親御さんがこれを購入した”想い”というものが汲み取れるというものだろう。

 カミオン少年、育った環境は悪くなかったようだ。

 

田浦-175
 奥へと踏み込んで行く。



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 セサミストリートキャラの小冊子。

 憎らし気な豚キャラが柔道着を着ている。

 時代的に、ヤワラちゃんこと谷亮子が活躍していた頃なので、彼女の存在を匂わせた、実にアメリカらしい、痛烈な皮肉の込められたギャグテイストのキャラクターノートだったのかもしれない。

 考えすぎだろうか。

 僕がアメリカにいた頃、谷亮子の国際試合をテレビのニュースで観たことがある。谷亮子選手の相手は日系のアメリカ人。試合は谷選手の見事な一本勝ちだったが、ニュースでは負けた日系人の方だけを映して、谷亮子は背中だけしか映っていなかった。アメリカ人とは、自国の人にしか興味が無いことを思い知らされた瞬間でもあった。

 当時、日本の国民的スター選手でもあった谷亮子選手を豚扱いすることぐらい、アメリカ人なら平気でやってのけるのではないだろうか。



田浦-177
 子供部屋に近づいて来た。

 田浦中学校の生徒会冊子。



田浦-181
 家の一番奥は、陽射しも眩しい、子供部屋だった。

 足の踏み場もないほど床を埋め尽くす残留物。

 天井からは蛍光灯のカバーが垂れ下がっている。



田浦-178
 壁を見ると、統一教会の合同結婚式でも話題になった『桜田淳子』のシール。



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 LESLIEと表記がある。

 これはおそらく、ベイシティローラーズのリードボーカル『レスリー・マッコーエン』。



田浦-180
 「彦」の文字。

 これは決して、着物デザイナーであり料理人の『きよ彦』、当然『彦麻呂』でもなく、近藤真彦のことだろう。

 カミオン少年には、妹かお姉さんがいた模様。



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 ベイシティローラーズにかなり熱をあげていた様子。



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 ベイシティローラーズの雑誌やムック本が大量にあった。



田浦-184
 二人の兄弟は仲良く東京ディズニーランドへ行ったようだ。

 並びの序列からして、カミオン少年を兄とみてほぼ間違いない。

 一生物のミッキーキャップと思われるが、心残りでありながらも、大事に箱にしまったまま引っ越すならまだしも、部屋に飾ったままだとは、何か特別な事情を訝しがらずにはいられない、僕    



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 手前の雑誌、メンバー全員がカメラ目線ではない。

 是非ともこの人だけは抑えておきたいだろう、リードボーカルの『レスリー・マッコーエン』でさえ、微妙に視線がズレている。ピントも甘い。

 本国の雑誌に掲載されたコンサートの記事やインタビュー記事、それも、メインの頁ではない目立たない箇所の写真を勝手にパクって構成された雑誌ではないだろうか。

 一昔前の台湾や中国でもこのような手法で、日本の雑誌からパクった記事で構成された雑誌が堂々と本屋で売られていた。いつか来た道、歴史は繰り返す、といったところなのだろう。



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 いかにも少女趣味らしいコミックスが並ぶ。

 個人的に、全く知らないものばかり。

 一番右のなんて、カイジの作者によるものかと一瞬思ったが、だとしたら、現在は相当なお歳だろうし、違うであろうことはすぐ察した。

 『ちょっとヨロシク!』は、週刊サンデーに1985年17号から1987年20号まで連載されていた、吉田聡による漫画。



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 妹の趣味は王道であり、当時の世間一般の同年代の少女達とそう変わったところはなかったようだが、兄のカミオン少年は、その名の示す通り、相当癖のあるものだったのだ    



 
つづく…

「カミオン君の声」廃村に行ったら取り壊し直前だった件.14

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