吉祥寺-188
 今では、断面丸見え構造と成り果てた母屋の二階から奇跡的に発掘された、ご住職一家の知られざる華麗なる暮らしぶりが窺える一冊の写真アルバム。

 正座をして、呼吸を整えてから、ゆっくりと表紙をめくってみる      



吉祥寺-112
 ショートヘアにパーマをあてているのは、ご主人の妻だろうか。カメラのレンズから目線を外してまるで美容室のモデル写真のように振る舞っている。

 序列的に、上段左端が妻。その右が母。

 小さい子から最後尾のお兄さんまで背の順に整列。六人兄弟という子沢山であったのか。当時ならそう珍しくはなかったかもしれない。

 古い写真アルバムにおいて、四隅が三角の形状をしたもので写真を貼り付けているのを見かけることがある。

 このアルバムは写真の裏にのりなどで直接貼り付けてあるので、三角留め具が出現する前の時代のものと言える。



吉祥寺-113
 ご住職の父と母。その隣が母。

 一番右の写真が、ご住職本人と母。

 身なりもよく、経済的には恵まれていた様子。



吉祥寺-133
 廃墟において、胸が押し潰されそうになる瞬間がこれである。

 アルバム写真の往時と比べて信じられないような没落ぶりを目の前に突きつけられる。

 黙って目をつぶり手を合わせることしか、僕にはできなかった。



吉祥寺-114
 親族や檀家さんだろうか。大勢が今では廃寺の吉祥寺に集っている。

 一番下。証明写真のような三連写真に収まる、中折れ帽を小粋に斜めにかぶる男性。

 英語も嗜んでいだハイカラご住職だ。



吉祥寺-115
 廃墟となった自宅で、埋もれていた写真アルバムを僕が発掘し、ご住職の写真を眺めている。そんな未来を知る由もなく、うっすら笑みさえたたえている、ご住職。



吉祥寺-323
 このお寺にお参りに来たお遍路さん。



吉祥寺-71
 あれだけいた子供たち、どうなってしまっているのだろうか。



吉祥寺-324
 ご住職ご誕生か。



吉祥寺-116
 若々しいご住職。

 旧本堂らしき場所で祝宴をあげているようだ。

 おそらく、ご住職の結婚披露宴ではないだろうか。



吉祥寺-117
 船上のように思われる。それもかなりの豪華客船。

 行き先は海外か。

 つまり、ご結婚されたご住職とその妻の新婚旅行。

 妻は米倉涼子似の美人。



吉祥寺-165
 あの時代に、海外航路でハネムーン旅行に出かけられた華麗なるご夫婦が、かつて暮らした住居。

 世の無常を一人噛みしめている、カイラス    



吉祥寺-118
 やはり、地元の横浜港だろうか。

 甲板上で船員や親族も揃って記念写真。

 撮るのはご住職。



吉祥寺-146
 建物の保温材には新聞紙を使用するなど倹約志向であったが、同時に資産家でもあった。



吉祥寺-126
 米倉涼子似の奥様が履かれていた靴。



吉祥寺-119
 行き先は、一般人にはまだ夢の憧れだった『ハワイ』だったかもしれない。

 お婆さんの忠告を緊張感を持って聞く、妻。



吉祥寺-160
 お寺の方は、数少なくなった檀家さんが、微力ながら、支えておられますよ。



吉祥寺-120
 横浜港で盛大なお見送り。

 華麗なるご住職一家の最盛期。



吉祥寺-321
 削がれた壁から下を見てみると、



吉祥寺-143
 枯れ葉の上にしっとりと、こんなものが落ちていた。

 半分埋まっていた。

 フラフープだろう。

 六人兄弟の子供たちが激しく遊んで関節部が外れてしまったのだ。



吉祥寺-147



吉祥寺-121
 過ぎ去りし栄光の日々は決して戻らない    

 国内旅行だったら、ここまで仰々しくやらないだろう。



吉祥寺-177



吉祥寺-322



吉祥寺-325
 坂本龍一風。



吉祥寺-122
 写真の中のご住職はいつまでも微笑んでおられた。

 そして僕は、隠すように、瓦礫の中にご住職のアルバムをそっと閉まったのであった。



吉祥寺-326



吉祥寺-327
 姉妹。



吉祥寺-328
 母。

 境内にて。



吉祥寺-128
 受け止めたものがあまりにも大きく、動揺と疲労で足元がおぼつかない、カイラス。



吉祥寺-129
 いつの間にか、日が暮れようとしていた。



吉祥寺-184
 謎とされていた廃寺のご住職一家の側面が伝えられただけでも今回は良しとしよう。



吉祥寺-181
 荒れ寺となっているが、修繕されないのは仕方がない。

 維持だけでも大変なのだろうから。



吉祥寺-175
 供養の意味があるのだろうか。表札が置いてあった。



吉祥寺-162
 細い鉄棒で支えられている状態。

 もう長くはない。



吉祥寺-189
 かつては、井戸から電動ポンプで水を汲み上げていた。



吉祥寺-178
 地蔵に背中を見送られながら      



吉祥寺-180
 通常ならこの先の階段を下って行くところだが、



吉祥寺-190
 今回は事情が違うので、この石版の方へ。



吉祥寺-191
 竹藪の向こうで、今夜も寂しくひっそりと、主のいないお寺が眠りに就こうとしている。

 いつまで、あり続けられるのだろうか    




おわり…

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