絶望工場タイトル725
廃工場-161
 工場の片隅でこんなボードを発見した。

 ダンボールをカットしてペンキを浸した筆で大胆に書き殴られたものである。

 『桃』が一個100円というお手頃価格。

 工場が廃業に追い込まれようとしていた金銭的にも精神的にも苦しい末期は、工場前の道端で『桃』を一個僅か100円ばかしで売ってでもしてその日一日をしのごうとしていたということらしい。

 漢字ではなくてあえてひらがなであったのは、スピードを出す車からの目視のしやすさを考えてのものだろう。

 実際、桃を買う客はほとんどいなかっただろうと僕は推測する。

 先日、ここを動画に撮ろうと思い現地にまた出かけて行ったのだが、このブログの読者である『旭山の遠い親戚』さんが僕の車を見かけたらしく、

>今日山梨行くのに以前紹介していた相模湖のローヤル付近通ったんですが平屋の工場の廃墟に居ませんでしたか?

と、ブログのコメント欄に報告を寄せてくれたのである。

続けて、

>声掛けたかったんですが停めるところないので諦めて素通りしました

そう、この工場が立地するのは、山の中の大きなカーブの途中。車の往来の激しい道。側道にスペースは無い。僕が車を駐めたのは僅かばかり残された家の敷地のほんの限られた場所。僕のコンパクトSUV車一台駐めただけで他の車が駐車するのはまず不可能。

 他にも『ゆず』や『のびる(ネギの一種)』などの看板もあったが、たいした家計の足しにはならなかったことは容易に想像できる。徒歩の人などまずいないし、気安く車が停められないとなると、道端の物売りで得られるお金など無いに等しかったろう。

 工場は廃業。道端の物売りは焼け石に水。

 畳み掛けるように、両親の死が立て続けに起こり、それがとどめとなり、契機ともなり、一家はこの廃工場から、姿を消したのか   



廃工場-162
 商品名か、ブランド名か、屋号か。

 すっかりテレビで見なくなった名前も忘れてしまった二人組のお笑いコンビが似たようなギャグをやっていなかったかと『もしかして・・・では?』を期待してうろ覚えの『ツクツクブンブンゲーム』と入れて試しに検索をかけてみたところ『ズクダンズンブングンゲーム』と出てきて、そのコンビ名は『はんにゃ』であったことが思い出される。スマートで便利な世の中になったものです。

 で、ツクブンとは『津久文』という茨城県にある老舗の干物専門店の名前だそうです。

 箱で大量注文をするほど一家は干物好きだったようだ。



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 剥製。



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 工員の流した汗が染み込んだタオルが令和になっても干されたまま。



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 ここで撮影をしていて、

『カイラスさ~ん、いますかぁ~』

 と背後から声をかけられたら、心臓が収縮したかもしれないが、そういう出逢いはむしろ望むところなので、黒い色をした超マイナー車種の小型SUVが廃墟に停まっていたら、お気軽に声をかけてもらえたいものです。



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 片隅には勉強机。



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 キン肉マンがアニメ化されていた頃。



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 表を撮影していた時に玄関の戸を開けようとしたが閉まっていた。

 靴箱の靴はほぼ残されているように見える。

 一家は、実用性の高い一足だけを厳選して身に着けて、月明かりの下、夜更けに、静かにここを出て行ったか   



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 実用的ではないし、飾り物にしては陳腐。

 使用意図不明の瓢箪の存在感。



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 一番奥の居間。

 さっきまでご主人が昼寝をしていたかのような布団の形状。



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 ホームレスがごく短期住み着いていた可能性もあるだろう。

 生物が動いている。



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 蜂。

 絶命寸前か。密室に迷い込んで体力を使い果たしたのか、一分間に3ミリぐらいの速度でジリジリと陽の光がある方向に遅いながらも着実に前へと進んでいた。



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 ファミリーアルバムを発見した箪笥からは、看護婦さん用の白衣も。

 内気そうで小太りのあの少女は、ナースになったのだろうか。



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 少女時代とは見違えるようなスラッとして艶やかな別人のような姿に成長したかつての少女が、そこに、いた   



 なお、『一家蒸発の絶望工場』の動画版『山に消えた一家「絶望工場」』がリリースされましたので、ご視聴いただけたら幸いです。


つづく…

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