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 卒業と廃校が目前まで迫って来ているということもあり、先日みんなで購入をしたプレゼントを先生方に学校まで手渡しに行った、キョーコさん達。

 普段語ることのなかった先生達の名前を出して思い出を語り尽くす、彼女。

 小学校時代も合わせて九年間の積もり積もった鬱憤も晴らすのかと思ったら、キョーコさんの口から出るのは感謝の言葉ばかり。

 自分しか読むことのない日記帳。普通はついネガティブな本音も出るものである。

 一人ひとりの先生方に心のこもった言葉で賛辞を述べる彼女の真摯な態度をみて、あぁ、本当にキョーコさんは心から先生方に感謝をして尊敬しているのだなと、そのひたむきで汚れなき純粋さに心打たれた、僕   

 経緯はよくわからないが、均くんが文通交際相手とうまく行っていないことを先生への手紙に書いたらしく、その手紙を受け取った先生に、均くんをもっと励まして欲しいなどと、男の子の友達に対して、まるで聖母のような溢れ出る優しさを垣間見せてしまう、キョーコさん。

 気がつけば、ZIGGYの日記帳も次でラスト。

 春休みを心待ちにする、キョーコさんだった   



25a
 1979年 3月25日 (26日) 1:25

今日 学校へ行って 先生方々へ 私たちからの
プレゼントを あげました _._。
東出先生,白川先生、谷先生*....種村先生 … 中村先生
方*にもう会えなくなるのかと思うと ナントナーク ・・・・・ ネ!
かなしくなってしまう .._。 中村先生 いい先生 だと思う.
種村先生も ... 一番年は関係なく若く感じる人は
何とい*っても種さんと ・・・ 中村さんですね。
次に .... 東出先生... 白川先生... 谷先生 . . . . などなど.
あの二人は何となく 気を若く持っているから
とても 好かれ やすい人々だと思う、
種さんも . 中村さんも とても 良い先生 ... 人だ。
均君に対してもっと はげまして あげてほしい.
均君は中村先生への手紙に敬子との文通のこと
*ナドを多少書いた そうだ! 中村先生は
つきあいやすい先生だし 話しやすく ... 生徒の
気持ち .... 人の気持を*わかってくれる 先生だ
からいいと思う。私より ・・・ 均君を ・・・ ネ!

中学を卒業する生徒が先生方々にプレゼントを用意する。先生に今より威厳があった昔の田舎の家族づきあいのように距離感が近い分校みたいな学校ならわかるが、都市部の学校では今も昔もそうなかったことではないだろうか。デパートまで行って贈り物を買うなんて。

ネットで容易に繋がれてしまう今と違い、キョーコさんの時代はもしかしたらもう一生会うことはないのかもしれないという”永遠の別れ”というものが卒業式にはあったに違いない。

先生方との別れの意味合いが今とは大きく異っていたのは確かだろう。

>東出先生,白川先生、谷先生*....種村先生 … 中村先生方*にもう会えなくなるのかと思うと ナントナーク ・・・・・ ネ!

種村先生といえば松山千春の大ファン。気に食わない先生はこの際だから罵声を浴びさせるというのではなく、敢えて列記しないで胸に納めておく、というのが心優しいキョーコさん流のスタンスのようだ。

>あの二人は何となく 気を若く持っているからとても 好かれ やすい人々だと思う

この言葉に隠れている意味合いは、他の先生は身も気持も年寄りで生徒から好かれていなかったということか。廃校か存続かに揺れていた僻地の学校に赴任してくる先生はお年寄りばかりだったのではないだろうか。

>均君は中村先生への手紙に敬子との文通のこと*ナドを多少書いた そうだ!

卒業するにあたり、生徒から先生方へ手紙を出したのだろう。

そこで均君は、良好でなかった文通交際の悩みを中村先生への手紙にしたためた。中村先生が生徒から信頼されていたであろうことは疑う余地もない。

>私より ・・・ 均君を ・・・ ネ!

中村先生は特にキョーコさんに対して心配をしてくれていたか。

友達思いの慈悲深いキョーコさんはこう言ってのけたのである   

『私より ・・・ 均君を ・・・ ネ!』

もしかしたら、キョーコさんと均君はカップルとして結ばれることはないだろうけど、一生涯の友人関係として絆を今も持ち続けている、いや、そうであって欲しいと切に願う僕がここにいる   



25b
今,一番 ガックリ している人は均君だから.
今の均君を ハゲマしてあげてほしい。
私 トミー 大好きになってしまった、
すぐ 気うつりしてしまうから いや           ね.
でも . . . . . 気うつりするといっても一度好き
になった好きな人は ずっと好き ._. どんどん
好きになっていく人が ふえても ・・・ みんな好
き . 今だって 松本君のこと ... もう二年
以上も過ぎたけど ・・・・ 姿さえ 忘れかけ ・・・
中学生時代の恋の ・・・青春のページのかたすみにのこって
あるていど だけれど 忘れられない . 一度 ・・・
この胸を こがして 好きになった人だから ・・・ ・
あと 山角君も ・・・ 宮脇君も ... 金山君も ・・・
千春も トミーも スティーヴも 大好き ♡
好きな人はたくさんいるけど -・-・
今 一番*結*婚したいと思うほど
好きな人は トミ              ♡ . 大好き ♡
もう そろそろ この日記も 終りです ・~。
長かった! . . .。ちょうど ・・ 春休み ・・・?? おやすみ。

キョーコさんは先生に訴える。

同級生との交際どころか、その手前で行き詰まっている均君に、励ましのお言葉を先生から投げかけてやってくれないかと。

同級生の男女でありながら、遠いようで近くて、一線を画し友人のラインを決して越えない、何でも言い合える仲のキョーコさんと均君。思えば、キョーコさんが好きな三人を記したメモを盗み見て「おまえ(キョーコ)大丈夫か?」と呆れていたのか心配をしていたのか、声をかけてくれたもの均君だった。中学生時代に恋を成就することの出来なかった彼女ではあったが、異性の生涯の友を得たと言って過言ではないのかもしれない。

>私 トミー 大好きになってしまった

ゴダイゴのトミー・スナイダーにもう夢中だった。

>松本君のこと ... もう二年以上も過ぎたけど ・・・・ 姿さえ 忘れかけ ・・・

気移りしやすいのは本当だった。一時期は毎晩日記に書いて泣きながら書いているような夜もあったというのに、松本君の姿さえ忘れかけているという、移り身の早さ。多感期の青春時代の一時のことだからかもしれないが。

>一度 ・・・この胸を こがして 好きになった人だから ・・・ ・

歯医者さんの待合室で見かけたリーゼント頭の革ジャン姿の彼のことはもうすっかり忘れてる様子。街中のバス停留所まで雪の日にリーゼントの彼を追いかけて行ったあの日のことが遠い昔のように思えてきてしまう。

>山角君も ・・・ 宮脇君も ... 金山君も ・・・千春も トミーも スティーヴも 大好き ♡

一般人やタレントの区分なく誰でも好きになってしまう多様性のある、キョーコさん。世間の加熱したゴダイゴのブームに流されているだけかもしれないが、トミー・スナイダーとは結婚したいぐらいに目下惚れ込んでいた。

>もう そろそろ この日記も 終りです ・~。長かった! . . .。

次の日で、この日記帳も最終ページなる。

新しい日記帳とともに、高校生活を始めることになる、キョーコさんだった   



 次回、ZIGGYの日記帳最終ページで、壮大な夢を語ることになる、キョーコさん。

 苦しい受験勉強に耐え抜いて結果を残して、自分で未来を切り開いたからこそ言える夢なのかもしれない。

 数点のイラストも描いているが、これがまた人や着用しているドレスをしっかりと三次元で捉えていて実に上手くて、思いがけない才能の萌芽を見せつけてしまう。

 あまりにも上手なので、印刷か?と思ったものの、直筆で自分の名前が添えてあったので、そのインク文字と比べてみると間違いなく彼女のイラストであることが証明されたのだ。

 お宿の日記の和香子ちゃんもイラストを書いていたが、同い年でも雲泥の差なのである。

 大きな夢を公言したのは、それを自分に言い聞かしていたのだろうか。

 中学生時代に別れを告げたキョーコさん。

 高校入学とともにその夢に向かって突き進もうとしていた   

 


つづく… 

「大いなる夢を語る少女」廃屋に残された少女の日記'79.37

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