満身創痍の難破船のような、くたびれた小舟が息も絶えだえやって来たようだったが、条件反射のように、一目散に僕は来た崖を駆け上って行ってしまう。 廃棄物のような船に乗っていた人は、噂にきいていた、この小屋の主人であるのか。違うとしたら、こんな朝早くに、どこ ...
カテゴリ:秘境・小幌駅、冬のひとり滞在
「もうひとりのやって来た彼」 秘境・小幌駅、冬のひとり滞在.5
駅からの崖を下ってきて、大方の入江周りの探索は終えたので、ようやく、洞穴へと入っていってみる 僧円空が安置した仏像。言い伝えでは、修行僧が熊に襲われるが、仏像の後に隠れて難を逃れた。その際、仏像の首は熊に食いちぎられたという。以来、「首なし観音」 ...
「崖の下の占有空間」 秘境・小幌駅、冬のひとり滞在.4
小幌駅からの崖を下り、ただひとり、地平線までこの眺めを独占できる権利を、たった今、得る。 好きな形の石を拾っても集めても良い。裸足になり、ズボンの裾を膝下まで捲り、波打ち際へ立ち、氷のような冷水を受け、肌の凍えからくる急激な皮膚の収縮による刺すような ...
「崖を下る男」 秘境・小幌駅、冬のひとり滞在.3
秘境駅ブームでもなければ、待てど暮らせど一日の乗降客は存在しなかったのかもしれないのに、ご丁寧にも立派なトイレが設置してある。 接続列車のことを考えると、小幌駅の滞在は最低でも一時間は必要になってしまう。真冬の寒い中、例え訪問時には体調が良かったとして ...
「廃施設、重点見回り」 秘境・小幌駅、冬のひとり滞在.2
前後をトンネル。左右を山と崖に阻まれた、隔絶され取り残されたかのような狭い空間に存在をするのが、「小幌駅」。 もう一方の逆側のトンネル。 山側。 ジムニーでも登って来るのは無理だろう。 廃屋長屋の奥を行った先の崖を下っていくと、そこは入江に囲ま ...
秘境・小幌駅、冬のひとり滞在.1
車中泊をすれば朝には窓ガラスに台湾かき氷を敷き詰めたような霜がびっしりとこびりつく。それを道中のダイソーで購入をした雪掻き棒の先端のヘラで削ぎ落とすのが朝の日課。 みぞれはもう見たが本格的な雪はまだのようだ。北海道の人からしたら、これぐらい真冬ではない ...