驚いたことに、そこは正確に言えば、廃屋ではなかった 毎度のことながら、都会の街中に眠る、昭和ロマンの息吹を閉じ込めたかのような、まだ見ぬ廃屋を求めて、地元を徘徊していた、気温三十三度を超える、ある夏の日のこと。 郊外や地方に行けば、そんなの(廃屋 ...
カテゴリ:廃屋生き仙人との友情
「心を開いた、廃屋生き仙人」廃屋生き仙人との友情.2
廃屋生き仙人こと、Iさんが不意の訪問者である僕に、比較的ためらいもなく心を開いてくれたのは、ある偶然に偶然が重なってのことだった。 何しろ見ての通り、これなのだから、長年の経験を元に廃屋であるという判断を下してしまった、怪しげな僕を発見し、家主であるIさ ...
「外へ出た、廃屋生き仙人」廃屋生き仙人との友情.3
廃屋生き仙人さんはそっと僕の耳元で囁いた 「日本がリセットされるよ」と。 僕へ対して執拗に警鐘を発し、来るべきその日に備えて、準備だけはしておけよと、具体的な商品名などもあげ、日本の行く先を憂う男が、今日もその日への準備に余念がない様子。 数百坪は ...
「周遊する、廃屋生き仙人」廃屋生き仙人との友情.4
「土地は絶対売らない。これ以上、外者(そともの)が来るのを阻止したいから・・・」 土着原理主義者であるのか、廃屋生き仙人さんはそう吐き捨て、組んでいた腕をキュッと硬く締め直す。 以前は近所の人も皆、昔からの知り合いだったが、まず、バブル期に近隣で土地を売る ...
「さようなら、廃屋生き仙人!」廃屋生き仙人との友情.5
生き仙人邸周囲の路上清掃も兼ねた午後のひと時の周遊散歩を済ませ、足取りも軽く、お顔は晴れやかに、邸宅敷地内部へとまた僕を招き寄せる、廃屋生き仙人 「こっち側はまだだっけ?」 生き仙人さんが「東屋(あずまや)」と呼ぶ、障子紙の戸が玄関という建物の向か ...