カラフルな寮の中には、昔日の、若き血潮を想起させる、大量のエロ本が、約四十年の歳月を経ていまだ、新書のような真新しさで、そこらに散乱していた。 居間には、散らばるエロ本の間より、楽しげな家族の写真アルバムが、申し訳なさそうに、置かれていたことが、なんと ...
カテゴリ:森の奥の、廃墟エロ本寮
「時間が止まった台所」森の奥の、廃墟エロ本寮.2
観音開きのドアを押して中に入って行った。苦役を強いられ疲弊していながらも、食欲と性欲だけは溢れかえっていそうな、独身男性のみが寄り集まる、むさ苦しい建設現場の飯場をイメージしていたが、内装も地方の洋風の小規模美術館のような落ち着きのある洒落た作りになっ ...
「寮生の欲望の山」森の奥の、廃墟エロ本寮.3
山の中で軟禁でもされているかのような禁欲空間で生活を送る寮生達が、つかの間の性の開放をそこに求めたのか、持て余した若い体の火照りを冷まそうと、毎夜、賑やかに、新作入荷の時は、沈黙と静穏さをもって、皆食い入るように、一心不乱に、この居間にて、性情報の氾濫 ...
「茫然自失の、写真の中の少女」森の奥の、廃墟エロ本寮.4
中学や高校を出たての、一日中異性のことしか頭にないような、止めどもない性欲が溢れんばかりの青年たちの欲望の全てを曝け出したかのような、山奥なのに、磯の腐敗臭がほんのりと そのあまりにも惨憺たる卑猥な目の前の情景から察するに 漂ってきそうな錯覚さえし ...
「振り出しに戻った、エロ本寮」森の奥の、廃墟エロ本寮.5
北品川といえば、東海道五十三次の第一の宿場町「品川宿」があったエリア。一度行ったことがあるが、昔を偲ばせる旧街道は道幅が今ではとても狭く感じられ、道路沿いには古くからのこじんまりとした商店が、虫食い状態で不規則に間を置きながらも、道の両側にのんびりと軒 ...
「畑山さんの視線の先」森の奥の、廃墟エロ本寮.6
心温まる昭和の家族の団欒とは対極に位置する、性風俗雑誌。 弱酸性でもある鳥の糞が、日光や温度に晒されて水分が蒸発する事で徐々に酸性度が濃くなり、カラーグラビアページを変色させ紙を突き破りもした。 ミニ写真アルバムの中のある一枚の少女に至っては、現在、外 ...
「酷い団欒の場」森の奥の、廃墟エロ本寮.7
僕は眠くもないのに目を手の甲で擦ってみた。 信じたくなかったのだ。眼の前の酷い惨状が。 この場がまさか、たかだか数十年前、近藤さんがおすまし顔で所在なさげに海苔の瓶を中空にあげたまま固まってみせ、たかしととしは育ち盛りとみえて食事にガッつき、畑山さんは ...
「弾かれた同行者」森の奥の、廃墟エロ本寮.8
廊下を歩いて行くとベランダに出た。農家の納屋のようなトイレが並んでいる。 トイレを使用するにはいちいち外に出て外気に触れなくてはいけなかったのだから、冬は凍えるような寒さだったろうし、夏は虫に悩まされたことだろう。 畑山さんが普段みることも経験したこと ...