秋が終わり、冷たさの染みる肌身で冬の到来を感じ、急に人恋しさをおぼえ、元気かな?元気かな?と、歴代の意中の人を、心の隙間を埋めるがごとく溜息混じりに、次から次へと名前を呼ぶことで、正気を保とうと果敢にに努めてはみるが、何一つ変わらない現状に急に虚しくな ...
カテゴリ:北海道
幻の沼を覆う、倒錯した遊園地.1
苫小牧では名の知れた実業家による、潰えた夢の跡、湖の畔(ほとり)に眠る、いや、本人は湖と主張して客を呼び込みたかったようだが、どう見てもこれは沼。地図上では「丹治沼」。 自己所有の沼を切り開き、まずは構想の第一段階として、ホテルを建設する。 隣のウトナ ...
「文化祭の失態と震えるポエム」実録、廃屋に残された少女の日記.72
彼女にとって中学生活最後の文化祭が開催されることとなった。 ここ数日、日記をさぼっていた理由を、本当に最後の文化祭だから、明日に備えての心構えが必要だったからと弁解するが、その割には、劇の練習中でも殊に注意していた、あの、ミスりそうな部分が、本番でもそ ...
「坑夫のヘルメット、戴冠式」さまよい森の明治本岐炭鉱.3
食べられそうなキノコでも無いのかなと時折茂みを蹴り上げながら、見るだけでも陰鬱になってくる、すでに森の一部と化している廃墟構造物に、足元に細心の注意を払いつつ、侵入してみることにする 森にこんなものが置き去りとは、土地の所有権とかはまだ炭鉱会社が ...
「訊き出した彼の行方」実録、廃屋に残された少女の日記.71
かねてからキョーコさんの恋愛事情にちょっかいを出してきた均君が、とうとう押さえきれずに人目もはばからす実力行使に出てしまったのか、いや、単なるケチな節約家であったのか、真意は不明なものの、彼女が飲みきれなったコーラを「勿体無い!」と理由をつけて奪い取り ...
【最終話 汽笛の歌】小説、少女が残した日記『交錯のMEMORY』
専らアルコール派で喫茶店に慣れぬがゆえに、直ぐにコーヒーカップを空にして時間を持て余していたサブは、約束の15分前には白河を急かして喫茶『ひまつぶし』を出た。 駅前のビジネスホテルで遅めの朝食を食べた後、2人は澪と待ち合わせの11時までホテルの路地裏に ...