
バイクの税金を滞納してしまい、それを「出張所」なる場所で支払うため、知らない道をナビを頼りに、畑の中などを突き進んでいる時に、偶然に発見をした、廃墟アパート。
新宿からそれほど遠くない場所にありながら、周囲を森と畑に囲まれて、人々の営みから隔絶されているかのような、廃アパート。
都会の森に埋もれた廃アパート
その訪問レポートを記事にして掲載。それなりの好評を得たらしく、以降、一定数の方々に読まれ続けているようなのだが、そんな中、コメント欄に、衝撃的とも言える”ある”書き込みがされたのだった。
「このアパートの近隣に住んでいますが、1Fの一室のみ人が住んでおられるみたいです」
信じられないことだった。
草木で侵食され蔦が蔓延るこの古びた廃アパートを、一階から三階までを這いずり回るようにして、僕は撮影のために数時間は費やした。
人の気配など、微塵も無かったはず。
階段の途中には、世にも虚しい情景、ホームレスがエロ本を肴にして、酒盛りでもしたような跡さえ残されていたぐらいなのに・・・

あそこまで調査をしておきながら、見逃していたというのか。
幽霊でも住んでいるのか、あるいは、息を殺し気配を消して、あの朽ちゆく廃墟に、潜むようにして、隠遁生活を送っているような人が、いるとでもいうのだろうか。
真夏の蒸し暑い、ある”日”のこと、謎を解明すべく、僕はまた、あの「都会の森に埋もれた廃アパート」を、訪問することにした。

暴発したかのような夏の緑が、より一層、廃墟アパートを覆い隠している。

これが、一階居住部分の全て。見える範囲が全部。
羽幌の炭住アパートも、ここまで酷くはなかった。
万が一、住んでいる人がいたとしたら、布団を干す時はどうする?
横を通過する時に、横目で注意深く窓を確認したが、とても、人の住んでいる様子は見受けられなかった

ジブリの森はここからそう遠くない場所にあるが、これは言わば、メィゾンの森。
メィゾンの森に埋(うず)もれた、廃アパート

季節柄、木々の装飾がかなりビビッドになってはいるが、前回と変わらぬ、誇らしげなネームプレート。

タイヤの空気が抜けて放置されたままの、ライトエース、あるいは、タウンエースが、前回同様、不動の状態でそのままに。
この廃墟アパートの存在はその後も妙に気にはなっていたので、記事にした後、数回訪れていた。その時は特に変わった様子もなく、全体をただ眺めただけで終わっていた。
「一階に人がいる

二階の小林さんの凛々しい毛筆体、前と変わらず。
前回の記事では、この小林さんがご在宅なのではないかと、特に力を入れて調査をしたのだが、明らかに空き室であった。
一階の住人というと、左の一列になるが、どの郵便受けも、使われている様子はない。

僕が「絶望的な宴」と命名をした、哀れな痕跡も、まだ残されたまま。
前回から半年以上も経過しているが、風雨で多少配置が変化をしているぐらいで、あとは同じではないだろうか。

前回の様子。
どうやら、下手から強風が襲ったらしい。

吸い殻の量も変化なし。
しかし、僕が「絶望的~」とまで謳い上げた、根源、あの、物品群が消失していた。

もう、おわかりいただけただろうか

ネットの波に乗りそこね、下流の波間で藻掻く、寂しいご老人が愛読していたと思われる、エロ本の山。
拾って集めてきた、宝の山のエロ漫画雑誌。世間から隠れるようにして、廃墟アパートの階段に腰を下ろす。発泡酒やデザートのミルクティーを飲みながら、妄想の世界で羽目をはずし、下半身を熱くみなぎらせる。
朦朧とした意識の中、鈍重な瞼をなんとか開くと、辺りは明るく、もう朝になっていた。騒がしいのは、鳥のさえずりだったのだ。
開かれたままのファスナーからのぞくのは、彼の萎れて黒ずんだ茄子のようなイチモツ。その先と指先には、伸ばした無塩バターの乾燥した後にできる、ふいた粉のような白い糟が、びっしりこびり付いていた。
階段に横たわり、寝起きで股間だけを露出したままの彼が、右手の拳を上に弱々しく掲げる。
「これをやるために、半世紀以上、生きてきた。人に迷惑はかけていないだろう、俺は
エロ漫画雑誌を枕にして、いつまでも熟睡し続けるご老人を、確かにそこの階段に見たような気がしたが、再度振り返ると、もう雑誌ごと消えていた。

そういえば、二階にはポケモンの「プクリン」がいたなと思いだし、行ってみたが、誰かによって盗まれていた。
ポケモンGOのアプリを入れたので、廃墟でポケモンコラボでもできるのではと考えていたが、徒労に終わる。

前回発見をした、沖縄などで魔除けとして用いられている「石敢當(いしがんとう)」。

誰の仕業だろうか、本来の役目を果たさせようと、起き上がらせられていた。

廊下に自生でもしてやろうかという侵食ぶり。
さて、いよいよ、一階フロアの、全ドアの、総チェックを、開始することにする。
これほどまでの完璧な、廃墟アパートに於いて、地縛霊のような住人は存在するのか、否か。
全てが、明らかになるはずだ。

一番手前の部屋。

前回もそうだったが、物音は一切しない。

蝉の声だけが聞こえる。

一階、一番奥の部屋。
夏の気怠くもある昼間に、おまえは何をやっているのだと、自問自答する。

呆れたというか、信じられないことに、とある一階の電気メーターの円盤が、飛び出さんばかりに、勢い良く回っていた。
クーラーを使用している、ようだ

都会の原始の森にひっそりたたずむ、「メィゾン」。

前回の記事の時にあった廃自転車。
次の様子見の際には、この廃自転車が消えていて、その代わりに二台の自転車があった。すぐ隣の廃屋が取り壊し中だったので、職人さんが乗ってきたのだろうと、その時は思っていた。

今回もあった。
明らかにリサイクルされたような自転車だが、どちらもサドル部は”テカテカ”だ。
隣の廃屋は既に取り壊され、一見して前と同じような住宅が完成していた。

敗北感のようなものを味わい、メィゾンを後にする。
畑の横の小道。
自転車を押しながら歩いていると、メィゾンの方から、自転車のスタンドを蹴り上げる金属音がした。油でじゅうぶん潤っていないだろう、その安物の自転車は、聞くに堪えない金切り音をたてながら、僕とは反対方向へと、遠ざかって行った。老人だとしたら、随分と威勢がいい。直視はしていないので、実際のところの正体は不明のまま。
メィゾンに怨霊住人はいたのだ。
そう自分に言い聞かせ、一夏の無駄な数時間、人生の中で取り返しのつかない貴重な時間を、どのようにしてこれから取り戻そうかと、熟考しながら、帰途につく。
終わり…
※追記
メディゾン前の車両ですが、おそらく1992年から1994年ころの「トヨタのタウンエース」 ではないかとのこと。
コメント欄よりご指摘していただきました。
アプローズ伯爵様、どうもありがとうございます。
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コメント
コメント一覧 (18)
年甲斐もなく、二次元系だったのかもしれませんね。エロトピアからの生粋な。メイゾンは取り壊されたようだし、彼は多摩川の河原にでも引っ越ししてしまったのでしょうか。
遂に居座っていた人が動いたかどうかは不明ですが、取り壊しですか・・・。都会の貴重な手付かずの廃墟といった感じだったので実に惜しいです。
お知らせいただきありがとうございました。
隣の森もなくなって、集合住宅が建つみたいですよ。
詳細なご指摘、どうもありがとうございます。
>唯一の住人、が車検切れでそのまま放置しているのではないでしょうか。
なるほど。レッカーされていないということは、そういうことかもしれませんね。
おそらく1992年から1994年ころのもの。
唯一の住人、が車検切れでそのまま放置しているのではないでしょうか。
ハイエースワゴンより小ぶりの二車種どちらかですか。訂正しておきます。ご指摘どうもありがとうございます。
淡白な記事にならないように心がけています。郷里から見守る親のような心遣い、ありがとうございます。
僕もそんなに詳しくないのですが、街中でよく見る長いやつが、ハイエースのバン(商用)で、この写真のは古い型の個人用ワゴンタイプなような気がします。
どうでもいいか・・・。
エッチさせてくれ
い~っひひひ
フハハハハハ
調布に詳しそうなので、時間があったら、夜にこの「メィゾン」に行って、一階の窓の灯りを、確認しに行ってみて下さい。僕の行動パターンだと、この場所に夜間はまず、訪れないので。
一階のベランダはどこも蔓草でほぼ埋まっているのに、人が住んでいるのが、いまだに信じられません。
なんか沖縄時間に対して進めなきゃいけない加減の事象のようなんですが。
あ、君の笑顔。隠しちゃじゃダメだよ。
そうさぼくらは(p.k.m.n)...
・・自転車注意だよ!何か点数取られたりとかゲームオーバとかほら(ハミコンの知識で浸透を図る江戸や子猫)・・・。
すみません。。。
「剣チック」の意味がわかるまでアイツ尋問します・・・。
注意な自転車はあいつの心にありますよね☆、
時間が沖縄ですよね。
こちらはもうインバウントだか何かの時間軸で白黒黄色(特に黄色)が溢れてきていて追いつきません。。
あいつら沖縄時間でこっちは剣ちっくなので進めてはどうでしょう!?
PO・KE・MO・NN/60!日本発輸入!!!
ナ・・ナナんとアメリカで人気のPokemong!が日本上陸!本場のウェスタンを肌で感じようぜ!
君の周りは本場USAメイドのポケモンで一杯だかすぐゲットしてね!自転車注意だよ!!