ハヨピラ 階段
 車中泊明けの早朝。自分以外に車の姿を全く見かけない一直線の道を颯爽と飛ばしてい行く。

 行き先は、北海道は日高の平取町。

 事前に聞いた話では、トム・クルーズが心酔をしている「サイエントロジー」のような、科学を教義の中心に置くとある”カルト教団”が建立したらしい、UFOを招き寄せるというピラミッドがあるということだった。

 先日、新宿駅から中野方面へ行くのに中央線に乗ったら、新宿駅を出発してからすぐの窓の左側に、サイエントロジーの立派な教団施設ビルを目撃する。建物の規模的に、サイエントロジーは日本でも相当な信者数の獲得を目指しているのではないかと思われた。

 サイエントロジー自体には特に興味もなく嫌悪感もない。トム・クルーズはSF映画を量産することで、サイエントロジーの教義を世界中にひろめようとしているらしいので、SF映画好きとしてはむしろ頑張って欲しいところだが、こういうことが図らずして思惑に嵌っているということなのかもしれない。

 オウム真理教がヨガ同好会から信者を少しずつ獲得していったように、平取町の施設も、カルト教団による一つの布教手段なのではとも思えたが、いろいろ調べてみると、どうやら違っているようなのであった。



ハヨピラ 門
 かつては、UFO教団とも呼ばれていた、CBA(COSMIC BROTHERHOOD ASSOCIATION【宇宙友好協会】)という団体が、これらの施設を建てたとのこと。

 その団体が解散したため、残ったこの施設を、平取町が自然公園として整備し一般に公開したが、災害を理由に、すぐ閉園させてしまう。

 なぜせっかくの施設を生殺しのような状態にしてあるかというと、この先を行ってみると、『そりゃ、そうだろうな・・・』と、次第に判明していくことになる。



ハヨピラ 敷地
 詳しい場所は事前にチェックしておかなかったが、山の上にあるピラミッドなので遠目から見えるだろうし、平取町の町中からも目視できるだろうと軽く考えていたら、周囲を見回してもさっぱりわからない。

 ガソリンスタンドでの給油ついでに店員に「UFO教団のピラミッドってどこにあるんですか?」と、勇気を出して聞いてみる。

 店員の青年は言葉を返さず、あっけにとられたように僕を見つめる。面食らっているのか、反応がとても鈍い。「山の上にあると聞いたんですけど   

 施設名の認識が地元の人と違っていたのか、朝一番であんな所へ行くおかしな人と警戒をされたのかは不明だが、とてつもない違和感を向こうが僕に抱いているらしいのはわかった。

 半笑いのような、何か言いたげで、でも押し殺したような、どぎまぎとした物言いで「方角的には向こうになります」と、『ホントに行くんすか・・・』とも見れる多少の怯え顔のようでもあったが、とりあえず行くべき方向は、指し示してくれたようだった。



ハヨピラ 道路
 大きなカーブの途中にいきなり現れる入口。



ハヨピラ 由来
 「ハヨピラ」とは、武装した崖の意味だそうです。



ハヨピラ 遠望
 ピラミッドに登る前に、周辺にいろいろありそうなので、行ってみる。



ハヨピラ ゴミ箱
 ここでもゴミ箱チェック。

 中は、ゴミ入りのビニール袋が溢れんばかり。コンビニ袋ではなかった。前時代のゴミである可能性がある。



ハヨピラ 石像
 教祖でも祀ってあるのか。



ハヨピラ 上へ
 施工は全てCBA会員達の手作りによるもの。素人ながらここまでやり切るのは大したものだが・・・



ハヨピラ 1
 狛犬のような、



ハヨピラ 2
存在でしょうか。



ハヨピラ 寄り
 アイヌの神「オキクルミカムイ」を宇宙人として祀って、本気でUFOとコンタクトをとろうとしていたようです。



ハヨピラ 飛行機
 宇宙友好協会は、航空ジャーナリストの松村雄亮氏によって設立された。

 彼の思いが具現化された飛行機石像。
 


ハヨピラ マムシ
 北海道は、注意しなければならないものが実に多い。



ハヨピラ 横
 



ハヨピラ 石柱
 座るには微妙に足がブラブラしそうな装飾円柱。



ハヨピラ 中腹
 ピラミッドの中腹まで来た。眼下には絶景。



ハヨピラ 模型
 昔のSFペーパーブックの表紙を飾っていたような古めかしいデザインのUFO。



ハヨピラ またぐら
 コンクリート製なので、耐久性は高そうです。



ハヨピラ ufo
 下からも。



ハヨピラ 注意
 妙なマークがある。



ハヨピラ 塔
 脇にはこんな塔が。会員ら素人による手作りにしてはよく出来ている。



ハヨピラ 横から
 宇宙友好協会は途中からカルト化していったようですが、それもこの異空間ぶりを肌で体験すると、納得出来るような気も。



ハヨピラ 見下ろす
 平取町がここをすぐ閉鎖してしまった理由として考えれるのが、とにかく危険であるということにつきるだろう。

 凄まじい傾斜。ほぼ垂直。もし一歩でも踏み外したら、一直線に転がり落ちると思う。背面から落ちたら、命の危険さえ、大げさではなくありうるほど。やはり素人が設計したのだなと、切実に思い知らされる。



ハヨピラ 頂上付近
 ゼルダの伝説の神殿入口によくありそうなマークが。弓矢で真ん中を射抜くと『ピンピロピ~ン♪~』と鳴って扉が開くようなやつ。



ハヨピラ 中へ
 ピラミッドの展望台の頂上へ   



ハヨピラ 鉄階段
 異常な傾斜角度。踏みしめるごとに撓む、細く頼りない鉄製階段。



ハヨピラ 景色
 素晴らしい眺望を味わえるものの、命がけと言っても大げさではないのかも。

 エジプトのクフ王のピラミッドに頂上まで登ったことがある(イリーガル)けど、傾斜はなだらかで、一つひとつのブロックはそう大きくないので、案外容易に上まで行くことができた。

 ここは違った。



ハヨピラ 傾斜
 この画像がわかりやすい。尋常ではない急斜面。中腹にフェンスが用意してあったのは、転がり落ちた人を途中で止めて、被害を最小限に抑えようとする、平取町の計らいなのではないだろうか。



ハヨピラ 眺望2
 今にもポキリと折れそうな、赤錆だらけの鉄柵は、手をのせることさえためらわれた。

   UFOの前あたりに、うっすらと円形の葉叢(はむら)が確認できるかと思います。かつてあそこに、花時計が設置されていたようです。コメント欄より、ご指摘していただきました。どうもありがとうございます。



ハヨピラ 破損
 複数人で来て、ここでふざけ合うのはやめた方がいい。全てが脆くなっている。



ハヨピラ 背面
 背面。



ハヨピラ ターゲット
 アメリカのスーパーマーケット「ターゲット」のマークにも似ている。双方とも、微塵も意識していないだろうけど。



ハヨピラ 全景
 細心の注意を払いつつ下まで降りて来た。間違っても、家族などで訪れてはいけない場所。



ハヨピラ 花時計
 花時計と言われても、何のことやら。



ハヨピラ 奥野
 こちらも奥野氏の寄贈によるもの。



ハヨピラ 出口
 沢山の的のようなレリーフは何を意味しているのだろうか。眼なのか。或いは、UFOを図形化したものか。

 途中で他の人が来たらさっさと帰ろうと思っていたものの、結局最後まで僕一人の見学になった。

 ここに来なければ、もう一つの廃墟をまわる時間があったのではないだろうか。時間は有限。あのガソリンスタンドの青年の眼と態度は『行っても何もないっすよ・・・』との忠告が込められていて、喉元まで出かかっていたのかもしれない。期待に胸膨らましている僕を目の前にして、言うことがはばかられ、でも言わずに後悔させても可哀想で、しかし、出過ぎた真似は立場上できないと、逡巡していたのか   

 人の有り難い助言を引き出せるような、いつも柔和な応対のできる人間にならなければと、思い知らされた、今回の訪問だった。



おわり…

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